飲酒運転により事故を起こした社員を懲戒処分した事例
相談企業のエリア | 愛知県 |
相談企業の業種 | 製造業 |
相談企業の従業員規模 | 400名程度 |
相談のジャンル | 問題社員対応、懲戒処分 |
争点 | 懲戒処分の量刑 |
相談前の状況
A社の管理職社員Bは、帰宅途中に飲酒運転により物損事故を起こしました。社員Bにはそれまでにも交通違反歴が複数あったほか、勤務態度不良により戒告の懲戒処分を受けた履歴がありました。
A社は、企業秩序を維持する観点から、社員Bを厳格に処したいと考え、懲戒解雇を含めた社員Bに対する処分方針を当事務所に相談されました。
相談後の提案内容・解決方法
懲戒処分には戒告、減給、降格、出勤停止、懲戒解雇など複数の種類(手段)がありますが、その量刑は行為の性質、態様その他の事情を総合的に考慮して決めることになります。懲戒事由の内容に比して重すぎる懲戒処分をした場合には、相当性を欠くとして無効となるリスク(労働契約法15条)がありますので注意が必要です。
本件においては、飲酒運転の内容(酒気帯びの程度等)や事故の内容、あるいは就業規則の規定内容や過去の同種事例との比較、飲酒運転防止のための社員指導の有無などについて事実関係を確認し、関連する資料を検討したうえで懲戒処分の種類・手段を決定しました。
最終的に社員Bに対しては、就業規則における懲戒規定の内容及び過去の事例との公平性等を考慮した結果、懲戒処分として管理職から非管理職への降格処分をすることとなりました。
担当弁護士からの所感
飲酒運転に対しては社会的にも厳しい目が向けられているため、企業が飲酒運転に対して厳しい姿勢をとることは望ましくもあり、飲酒運転の程度・態様や事故の内容等によっては、懲戒解雇を含めた重い処分が選択肢として挙げられることになります。
もっとも、懲戒処分の有効性は行為の性質・態様その他の事情に照らして相当か否かによって判断されるものですので、手段の選択にあたってはケースごとの事情を踏まえることが必要となります。当該非違行為と当該企業の業種との関連性や、被処分者に酌量すべき情状があるか否かについても相当性判断の考慮事項の一つになりますので、単に懲戒事由該当行為だけを見て判断するということはできません。
例えば、運送事業者など業務自体に自動車運転が深く関わっているケースでは、企業に対する社会的評価や企業秩序維持への影響は大きいため、飲酒運転を事由として懲戒解雇をすることは有力な選択肢となり得ますが、他方で、業務との関連性が薄い場合や過去の処分との均衡などによっては、一度の飲酒運転で一発懲戒解雇は重すぎると評価される可能性もあります。
このように、どのような懲戒処分を選択するかということには法的判断が伴いますので、処分実施前に弁護士等の専門家に処分方針等について相談されることが望ましいといえるでしょう。
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岐阜県出身。中央大学法科大学院卒業。経営者側に立った経営労務に特化し、現在扱う業務のほとんどが労働法分野を中心とした企業に対する法律顧問業務で占められている。分野を経営労務と中小企業法務に絞り、業務を集中特化することで培われたノウハウ・経験知に基づく法務の力で多くの企業の皆様の成長・発展に寄与する。