ダンプトラック運転手から残業代請求訴訟が提起された事例

訴訟対応賃金問題

 

相談企業のエリア 愛知県名古屋市
相談企業の業種 運送業
相談企業の従業員規模 10名程度
相談のジャンル 残業代請求、訴訟
争点 未払残業代の有無(労働時間該当性等)

 

相談前の状況

砕石などの運搬業を営むA社は、従業員Bに対し、所定業務外の任意の業務として、取引先C社の砕石の運搬をすることを認め、これに対する報酬として特別運搬手当を支給していました。これは、従業員Bが、所定勤務時間以外にも働きたい、もっと収入を得たい、と要望したため、A社がこれに応え、会社所定の業務に加えて早朝に別の運搬業務を割り当てたものでした。A社としては請け負う必要のない業務であったため、取引先から支払われる運搬料をほぼそのまま従業員Bに特別運搬手当として支払っており、会社としては利益を生まない従業員Bのための業務でした。

ところが、従業員Bは、A社を退職する際に、早朝の運搬業務が時間外労働であり、その分の割増賃金が未払となっているとして、A社に未払残業代請求の訴訟を提起しました。

このため、A社は当該訴訟への対応を当事務所に相談されました。

 

相談後の提案内容・解決方法

「残業代」という名目で支払っていたものではありませんが、早朝業務の対価としては特別運搬手当を支払っており、労働時間で換算したとしても割増賃金に相当する金額となっていました。また、そもそも所定業務外の任意の業務であり、使用者の指揮命令が及んでいない可能性についても指摘しました。

こうして徹底して争う姿勢を示した結果、判決となった場合には会社にとって不利な判断がなされるリスクがある中で、裁判官に本件の実像を理解いただき、有利な内容にて和解による解決を図ることができました。

 

担当弁護士からの所感

運送業の皆様にとって、未払残業代請求は非常に悩ましい問題であると思います。法定労働時間を超えた労働に対する賃金はすべて時間に応じて支払わなければならないとする労働基準法と、成果に応じたインセンティブを付ける報酬体系とはミスマッチとなることが多く、使用者である企業にとっては全く不本意な残業代請求を受けるという事例が散見されます。

本件についても、従業員Bの希望に応えて善意で早朝業務を用意したうえで、これに対する報酬を「特別運搬手当」という形で支払っていました。会社にとっては時間外労働を命じたという認識はなく、したがってその支払名目は「残業代」ではありませんでした。

こうした場合、労働時間に応じた時間外割増賃金の支払義務を課す労働基準法のもとでは、残念ながら企業にとって厳しい結論が待ち受けていることが多いと言わざるを得ません。そうした中で、本件では、早朝業務に対して支払っていた「特別運搬手当」が労働時間に換算した場合でも割増賃金として十分な金額であったことや、A社の善意(利益を得ていないこと)、従業員Bの問題行動等の様々な主張・立証を繰り広げたことで、非常に有利な内容での和解を得ることができました。

本件訴訟の解決後は、インセンティブと時間外割増賃金とを整合させるようA社の賃金規定の改定作業を行い、会社の意図と労働基準法が適合した賃金体系を整えることで、今後同種の紛争が起こらないようにいたしました。


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