派遣先の変更が労働契約違反であると主張された事例

相談企業のエリア | 愛知県名古屋市 |
相談企業の業種 | 派遣業 |
相談企業の従業員規模 | 60名程度 |
相談のジャンル | 問題社員対応、団体交渉 |
争点 | 派遣先変更の可否 |
相談前の状況
派遣業を営むA社は、無期雇用派遣社員であるB氏をC社に派遣していました。ところが、B氏は職務能力が低く、態度も協調性を欠くなど問題があったため、派遣先企業からB氏の派遣受け入れを拒否されてしまいました。
A社は他の派遣先を探しましたが、B氏の希望に叶う派遣先がなかったため、B氏を解雇したところ、B氏は労働組合(ユニオン)に加入し、解雇の無効とC社への派遣を要求するに至りました。このため、A社はB氏と労働組合への対応を当事務所に相談されました。
相談後の提案内容・解決方法
解雇については一旦撤回いただき、B氏に対して新たな派遣先への就業を書面により命令することにしました。B氏は組合を通じて新たな派遣先への就業を拒否しましたので、複数回にわたり就業を命令したうえ、就業拒否を理由に改めて解雇をしました。
労働組合は、二度目の解雇の無効とC社への派遣を団体交渉により要求してきましたが、当方側は解雇の有効性を譲りませんでした。組合は、訴訟提起をほのめかすとともに、金銭解決の提案をしてきましたが、複数回の団体交渉を重ねたうえで、当方側はすべての要求を拒否し、結果、組合は要求を断念するに至りました。
担当弁護士からの所感
新たな派遣先が見つからないということだけでは、無期雇用派遣社員を解雇することはできません。派遣社員の能力や態度に不適格性があったとしても、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められるため(労働契約法16条)、その程度や内容によってはそれを理由とした解雇を直ちにすることはやはり難しいといえます。
そのような場合であっても、企業には人事権という強い権限がある以上、これを適切に行使することによって難局を乗り切ることが可能です。もっとも、そうした権限を正当に行使するためには、雇用契約書及び就業規則の内容が非常に重要となってきます。このため、弁護士などの労働関係法令に強い専門家の関与のもと規定を整備していくことが望ましいといえるでしょう。
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岐阜県出身。中央大学法科大学院卒業。経営者側に立った経営労務に特化し、現在扱う業務のほとんどが労働法分野を中心とした企業に対する法律顧問業務で占められている。分野を経営労務と中小企業法務に絞り、業務を集中特化することで培われたノウハウ・経験知に基づく法務の力で多くの企業の皆様の成長・発展に寄与する。