経営者の信用・名誉等を棄損した社員を懲戒解雇した事例

問題社員対応
相談企業のエリア 愛知県名古屋市
相談企業の業種 設計・企画
相談企業の従業員規模 20名程度
相談のジャンル 問題社員対応
争点 懲戒解雇の有効性、損害賠償請求の可否

相談前の状況

設計・企画等の事業を営むA社は、B社長とC夫人の夫婦で会社を切り盛りする同族会社です。ある日、C夫人宛てに匿名の封書が届き、そこには「B社長は不倫している。C夫人は騙されている。」などとB社長の名誉、信用を棄損する内容が記載されていました。C夫人はこれにショックを受けて精神疾患を発病するに至り、経理を担っていたC夫人が働けなくなったことでA社の経営は非常事態に陥りました。

直接的な証拠はないものの、匿名の封書を送った人物はA社の営業社員Dである疑いが濃厚となり、懲戒解雇をしたいとの意向のもと、当事務所に営業社員Dへの対応をご相談いただきました。

 

相談後の提案内容・解決方法

営業社員Dの行為は、B社長個人に対しては名誉・信用を棄損する不法行為(民法709条)となり得ますし、会社に対しては職場内の秩序を乱し、あるいは経理担当であったC夫人を休職に追い込む点で自企業の業務を妨害するものともいえます。こうした営業社員Dの行為は、背信性、違法性が高く、懲戒解雇についての相当性が認められる可能性が高いと判断し、営業社員Dを懲戒解雇処分とすることとしました。

もっとも、営業社員Dは匿名の封書を送った事実自体を否定していましたので、これを素直に受け入れるとはいえず、法的紛争となることが予想されました。そのため、裁判に備えて立証活動の準備を慎重に行う必要がありました。

予想どおり営業社員Dは懲戒解雇の無効を争って労働審判を申し立て、その後訴訟へと移行しました。

訴訟においては、A社からも営業社員Dに対する損害賠償請求の反訴を提起するなど、守りだけでなく攻めの一手を取りました。結果としては、懲戒解雇が有効であることを前提に、ゼロ和解(原告・被告双方ともに支払なし)となり、A社が求めていた結果を得ることができました。

 

担当弁護士からの所感

懲戒解雇は懲戒処分の極刑ともいわれる重い処分であり、裁判所においてその適法性は厳しく審査されるため、これを行うにあたっては慎重な検討が必要となります。そうした中にあっても、本件においてはA社側が認識する事実関係を前提とすれば懲戒解雇の相当性は認められ得ると判断できましたが、本件の難しさはその事実関係の立証にありました。「営業社員Dが犯人に違いない」との疑惑があったとしても、それを事実として裁判官に認定してもらえなければ、懲戒解雇をする合理的な理由がないことになってしまいます。当事者にとっては「アイツ以外考えられない」と思えたとしても、客観的証拠が乏しい中でそれが単なる疑いではなく真実であると裁判官に認定していただくためには、状況証拠の積み重ねや、相手方の矛盾・嘘をあぶり出していくなどの主張・立証活動が必要となります。本件では、早い段階からご相談をいただけたことで、訴訟となることが予想された中しっかりと戦略を立て、入念な準備をすることができ、良い結果を得ることができました。