フレックスタイム制の活用法
愛知・名古屋で企業の労働問題を解決する
弁護士古山雅則の経営労務WISDOM
本記事で書かれている内容
フレックスタイム制とは
今回は、昨今の働き方改革の流れの中で、主体的で柔軟な労働時間制度として期待が高い「フレックスタイム制」について解説していきます。
ここがポイント‐この記事から学べること
1 フレックスタイム制導入の意義
2 フレックスタイム制の効果
3 フレックスタイム制導入手続
4 虎ノ門法律経済事務所名古屋支店による労務サポート
1.フレックスタイム制導入の意義
毎日の出退勤時間を自由に
「フレックスタイム制」は、1日の所定労働時間の長さを固定的に定めず、1か月などの一定期間の総労働時間を定めておき、労働者はその総労働時間の範囲で各労働日の労働時間を自分で決めることができる制度です(労働基準法32条の3)。毎日の出退勤時間(労働時間)を労働者が主体的に按配することで、生活と業務の調和を図りながら効率的に働くことを可能とします。
コアタイムとフレキシブルタイム
一般的なフレックスタイム制では、1日の労働時間帯を、必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)と、その時間帯の中であればいつ出社または退社してもよい時間帯(フレキシブルタイム)とに分けて設計しています。もっとも、コアタイムは必ず設けなければならないものではありませんので、全部をフレキシブルタイムとすることも可能です。
気になる採用企業の割合
厚生労働省「平成28年就労条件総合調査」によれば、フレックスタイム制を導入している企業の割合は4.6%となっています。規模が大きい企業ほど採用割合が高くなっており、企業規模1000人以上の大企業では約3割の企業が採用しています。逆に言えば、規模が小さい企業ではまだまだフレックスタイム制を導入しているところは少ないといえるでしょう。ですが、規模の大小にかかわらず、その適合性は業務内容によって決まるものですから、自社に合いそうだと思われた企業はまずは導入の是非を検討してみてはいかがでしょうか。
2.フレックスタイム制の効果
1日8時間を超えても時間外労働とならない
使用者は、フレックスタイム制の対象労働者について、1か月などの一定期間(清算期間)を平均し週法定労働時間を超えない範囲において、1週または1日の法定労働時間を超えて労働させることができます。簡略にいえば、フレックスタイム制をとる場合、1週および1日について、法定労働時間を超えても時間外労働とならないという法律効果を得ることができます。
時間外労働となるのは?
フレックスタイム制において時間外労働が発生するのは、労働者が自らの選択で労働時間を配分した結果、清算期間における労働時間の合計が清算期間における法定労働時間の枠を超えた場合です。そしてこの法定労働時間の枠を超える時間外労働に対しては、次の清算期間に繰り越すことはできず、割増賃金(労基法37条)を賃金支払日に全額支払うことが必要です(労基法24条)。
1か月の総労働時間の決め方
フレックスタイム制では1か月以内の単位期間を定めますが、通常は給与が毎月支給されることとのバランスで1か月を単位期間とすることが多いかと思います。この単位期間をフレックスタイム制のもとでは清算期間と呼んでいます。
清算期間の総労働時間は、清算期間を平均して1週間の労働時間が法定労働時間を超えない範囲で定めることが必要です。したがって、総枠は、40時間に清算期間の週数を乗じることで算出することになります。
もっとも、この計算方法によると、週40時間のペースで4週間勤務した後、端数の労働日が生じる月で8時間ずつ端数日に勤務した場合、時間外労働が生じてしまうことがあります。
そのため、労働基準法が改正され、次の計算式によって清算期間における総労働時間の枠を設定できるようになります。
遅刻、欠勤、早退の取扱いは?
フレックスタイム制においては、コアタイムを定めない限り、遅刻または早退という概念は生まれません。
コアタイムを設けない場合には、始業と終業の時刻は、完全に労働者の選択に委ねられるからです。もっとも、この場合でも、労働日に全く出勤しなかった場合は、欠勤となります。
一方、コアタイムを設けている場合には、その時間までに出勤していなければ遅刻、コアタイム終了前に退勤した場合には早退となります。
3.フレックスタイム制導入手続
(1)就業規則への定め
就業規則に、一定範囲の労働者について始業・終業時刻を各労働者の決定に委ねること(フレックスタイム制を採用すること)を定めます。
(2)労使協定の締結
次の事項を定めた労使協定を締結する必要があります。
・対象となる労働者の範囲
・1か月以内の清算期間
・清算期間における総労働時間
・標準となる1日の労働時間
・コアタイムを定める場合にはその時間帯の開始および終了の時刻
・フレキシブルタイムに制限を設ける場合には、その時間帯の開始および終了の時刻
働き方改革による法改正
4.虎ノ門法律経済事務所名古屋支店による労務サポート
中小企業が自身だけで難解な労働法制を理解し、法律に適合した制度を作っていくことは簡単なことではありません。法律が定める要件を満たさない内容となり、あるいは運用を誤ることによる法違反のリスクを侵さないためにもフレックスタイム制導入をはじめとする労務制度の設計、運用を専門家に依頼されることが望ましいといえます。また、専門家への依頼は、アウトソーシングによる業務効率化を図る点でも大きなメリットがあります。
そこで、虎ノ門法律経済事務所名古屋支店では、企業の皆様へ次のような労務支援サービスを提供しています。
(1)労務管理の制度設計についてのご相談
虎ノ門法律経済事務所名古屋支店では、フレックスタイム制度をはじめとした柔軟な働き方を目指す労働時間制度導入についての企業のご相談を承っております。
私弁護士古山雅則は、経営者側に立った経営労務に特化し、現在扱う業務のほとんどが労働法分野を中心とした企業に対する法律顧問業務で占められています。
自社に合った労務制度導入をお考えの企業様や対応にお困りの企業様は、虎ノ門法律経済事務所名古屋支店までご相談ください。
(2)就業規則の整備、雇用契約書の作成または賃金制度の改定支援
虎ノ門法律経済事務所名古屋支店では、各種労務制度導入のための就業規則等の整備支援を行っています。
非定型的な労務制度を設計する場合には、ほとんどの場合ネット等で出回っているテンプレートの就業規則では対応できません。各企業に適合した労務制度を設計・運用し、リスク軽減と円滑な雇用管理を実現させるためには、オーダーメイドで就業規則等の整備を行うことが必要です。
(3)残業代請求の事前予防
フレックスタイム制など通常の労働時間法制とは異なる制度を導入している場合、その制度が有効に運用されていなければ、その適用が否定され通常の労働時間法制に服することになります。その結果、予期しない多大な時間外割増賃金が発生してしまいます。
そのため、制度導入後の運用にあまり気を配ってこなかった場合は、これを見直し運用状況を確認、修正することが将来のリスク予防のためには不可欠です。虎ノ門法律経済事務所名古屋支店では、従業員からの未払い残業代請求等に対し豊富な経験、ノウハウがありますので、事件対応から予防法務まで適切なアドバイス、対応を行うことが可能です。
未払い残業代問題等にご不安な企業様やお困りの企業様についても、虎ノ門法律経済事務所名古屋支店までご相談ください。
虎ノ門法律経済事務所名古屋支店への相談は初回30分無料
虎ノ門法律経済事務所名古屋支店の顧問サービスの内容はこちら
岐阜県出身。中央大学法科大学院卒業。経営者側に立った経営労務に特化し、現在扱う業務のほとんどが労働法分野を中心とした企業に対する法律顧問業務で占められている。分野を経営労務と中小企業法務に絞り、業務を集中特化することで培われたノウハウ・経験知に基づく法務の力で多くの企業の皆様の成長・発展に寄与する。
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