使用者側・労働審判を有利に導く10のコツ Part2

虎ノ門法律経済事務所名古屋支店では、「労働審判」を有利に進める方法をご提案するとともに、過去の事例に基づく最適なご支援を実施致します。「労働審判対応」でお困りの企業様は、ぜひ一度当事務所にご相談ください。

④第1回期日がいきなり天王山

労働審判期日は全部で3回までありますが、勝敗の行方は第1回期日で決せられるといっても過言ではありません。

心証形成は第1回期日の内容で決まる

第1回期日までに準備された申立書と答弁書、そして第1回期日で行われる当事者に対する事情聴取によって、その事件の心証のほとんどが形成されます。したがって、第1回期日までに会社側の主張はすべてまとめて答弁書に記載する必要がありますし、審尋における当事者の受け答えの出来・不出来が与える影響も大といえます。

第1回期日で調停成立も

名古屋地裁では、申し立てられた労働審判のうちその7割から8割で調停が成立しています。そして、そのうちの約50%の調停が、第1回期日で成立しています。このことから分かるとおり、会社側としては、主張・立証を第1回期日までに尽くすことはもちろんのこと、方針や落としどころについてもしっかりと検討したうえで第1回期日に臨む必要があります。

⑤答弁書に全精力を注げ

魂込めた答弁書で会社の主張を説得的に訴えることが必須です。

駆け引きは不要!すべての主張を盛り込む

通常の裁判では、主張→反論→再反論→再々反論と順に行いながら争点が整理され、情勢も変化していきますが、労働審判は短期決戦です。一発勝負と思い、答弁書に全精力を注ぎます。
なお、再反論、再々反論等をすることはできますが、基本的には書面ではなく、期日において口頭ですることになります。

証拠の見せ方に一工夫を

提出した証拠は、実は審判員には事前に配布されず、期日当日の期日が始まる前に閲覧されているという運用が一般的です。そのため、重要な証拠については、答弁書の中で効果的に見せるように工夫することがテクニカルなポイントといえます。

⑥残業代請求事件では審判委員の確証を揺るがせろ

残業代請求事件は労働審判手続きになじまない??

実は、労働審判制度が発足する前は、残業代請求事件は労働審判手続きになじまない事件類型だと考えられていました。それは、労働時間の立証に手間暇がかかることや、裁量労働制や管理監督者など、会社側の反論によっては複雑な論点についての攻防が繰り広げられる可能性があったためです。
ところが、いざ労働審判制度がスタートしてみると、多くの残業代請求事件について労働審判が申し立てられ、しかも他の事件類型と同様に調停での解決が図られています。名古屋地裁でも、残業代請求事件は主要な事件類型として多くの事件が係属しています。
もっとも、残業代請求事件には、制度スタート前に言われていた性格をもった事件であることは間違いありません。残業代請求について労働審判が申し立てられた場合には、この残業代請求特有の性格をうまく活用することで、実は会社側に有利な解決を導くことが可能となります。

概括的認定を味方につける

労働時間の認定が争点の一つとなるケースでは、タイムカードがない場合には様々な証拠資料を根拠とした労働時間数の認定について攻防が繰り広げられ、タイムカードがある場合でもその打刻時間内の労働時間性を巡って攻防が激化することがあります。労働時間数の認定に用いられる証拠資料としては、例えば次のようなものがあります。
イ) 入退館記録
ロ) パソコンのログイン・ログアウト時間
ハ) 電子メールの送受信時刻
ニ) 店舗の開店・閉店時刻
ホ) 駐車場の入出庫記録
ヘ) ETCの通行記録
ト) シフト表
チ) 日報
リ) 労働者の日記、メモ
ヌ) 同僚の陳述書
こうした様々な証拠資料から労働時間数を認定していくわけですが、1回の期日で精微な認定を行うことは到底不可能です。このほかにも、フレックスタイム制の適用や定額残業代制度など、争点が多岐にわたるケースもあります。
したがって、残業代請求が労働審判によって行われた場合、その時間外労働の有無、時間数は、概括的な認定とならざるを得ないのです。この特徴を捉えて、未払い残業代の発生についての確証をとらせないことで、労働審判ならではの会社側有利な解決水準を導くことも可能となります。


 

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