団体交渉を有利に進める方法
虎ノ門法律経済事務所名古屋支店では、労働組合との交渉を有利に進めるための方法をご提案するとともに、解雇や未払残業代問題、休職問題など各テーマ別ノウハウに基づいたご支援をさせていただくことが可能です。合同労組やユニオンなどの労働組合との交渉でお困りの会社様は、是非一度当事務所にご相談ください。
本記事で書かれている内容
団体交渉のポイント
中小企業が対峙する労働組合は、そのほとんどが合同労組、コミュニティ・ユニオンと呼ばれる地域労組です。こうした合同労組の主要な活動は、個々の労働者の解雇、雇止め、未払い残業代請求その他の雇用関係上の問題を個々の企業との交渉によって解決を図ることにあり、まさに企業と戦うために存在している従業員のための労働問題のプロ組織といえます。さらに、こうした合同労組には、上部団体が存在し、各合同労組を指導していることが一般的です。
これに対し、企業側は団体交渉の経験がないことがほとんどです。対処方法を知らないまま交渉に臨んでしまえば、知らず知らずのうちに組合側のペースで進んでしまい、取り返しのつかない不利な合意(労働協約)を締結してしまう可能性があります。
次のポイントを押さえながら、企業側も入念な準備のもと団体交渉に臨むべきです。
回答書の作成・送付
団体交渉申入書には、議題、第1回団体交渉の日時、場所、書面による回答期限などが記載されています。議題はともかくも、日時、場所、回答期限などは会社側の都合を無視した一方的な「要求事項」ですので、従う必要はありません。
会社としても問題にあげられている議題内容を精査する必要がありますので、早々に回答はできません。深い検討のないまま軽はずみなことを回答してしまうと、後々まで会社を苦しめることになります。
したがって、最初の回答としては、「回答期限の延期の申入れ」をすべきことが多いと思います。この申し入れも、立派な「回答」になります。
団体交渉の日時
団体交渉の申入れにおいて、日時を「○月下旬ころ」などと幅をもたせてくれている場合は良いですが、「○月○日○時○○分」とまで具体的に指定されている場合は、会社としても予定が合わないことの方が多いですから、遠慮なく日時の変更を申し入れましょう。
なお、日程を延期する場合であっても、たとえば2か月後などあまりに先の日にちを指定することは「団交拒否」と受け取られかねませんので、注意が必要です。
また、特に在職中の従業員の場合に言えることですが、団体交渉は就業時間帯に行うべきではありません。これを行うと、団交中の従業員の賃金支払いを巡って別の問題を引き起こしてしまいかねません。原則として、団体交渉は就業時間外に行うべきです。
団体交渉の場所
団体交渉の開催場所は、実は重要な事柄です。
会社の会議室などで団体交渉を行ってしまうと、組合活動に会社施設の利用を認めたという前例をつくることになりかねません。他の従業員への波及も心配になります。また、自社だと基本的に時間制限なく使えるはずだ、ということになり、交渉を終えるタイミングも難しくなります。
したがって、団体交渉の場所は、貸会議室などを時間を区切って借りる、というのがおすすめの方法です。こうすれば、「2時間一本勝負」ができることになり、交渉が延々と長引くことも防ぐことができます。
団体交渉の出席者
団体交渉に誰が出席するかは、労働組合側、使用者側それぞれが自由に決定できることです。したがって、組合から「社長を出せ」などと言われても、必ずしも社長が出席する必要はありません。
もっとも、出席者は議題に関する事情を把握し、そしてある程度決定権限がある人でなければいけません。些細なこともすべて「社長に聞かないとわかりません」「自分では判断できません」というのでは、不誠実団体交渉と捉えられかねませんので、注意が必要です。
また、場合によっては、人数制限の申入れも検討します。労働組合側があまりにも多人数の出席を予定している場合、野次や怒号によって圧力をかけようとしている可能性もありますので、けん制しておいた方がいいでしょう。
団体交渉時の録音
録音をすべきか、という点ですが、何もないのに使用者側からあえて録音を申し出る必要はないと考えています。録音をしだすとその量は膨大となり、大事な発言を探すのにもかなりの労力を取られます。また、裁判所にしても労働委員会にしても、これを証拠として提出するには必ず反訳(文字起こし)が必要となり、やはり手間も費用もかかります。
録音が必要なケースとしては、労働組合側が限度を超えた罵声や野次を繰り返すような場合です。名誉棄損や侮辱にあたるような発言を労働組合側が行うのであれば、それはもはや正常な団体交渉とは言えません。正当に団体交渉を中断し、警告をするためにも、録音を取って証拠化しておくことが大事となります。
また、労働組合側から録音を申し出てきた場合には、会社側でも録音をします。労働組合だけが録音をすると、後々、一部の発言だけを切り取られて会社が窮する可能性もありますので、録音の正確性を確認するためにも双方で録音をすべきです。
「すぐに答えろ」には答えない
緊張感のある場で、猛者である労働組合の幹部からまくし立てるように責められると、心理的圧迫感から不用意にも答えを急いで出そうとしてしまう人もいます。口を滑らせてしまった返答やその場しのぎの約束をしてしまうと、後々の交渉が大炎上してしまうか、不利な条件をのまざるを得なくなってしまいます。
準備していない事項に関することや判断に迷うことは、即答する必要はありません。厳しい言葉で会社側を追い込むことは労働組合側の常套手段ともいえるものですので、会社側もこれに負けないようしっかりと心構えをしておくことが必要です。
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岐阜県出身。中央大学法科大学院卒業。経営者側に立った経営労務に特化し、現在扱う業務のほとんどが労働法分野を中心とした企業に対する法律顧問業務で占められている。分野を経営労務と中小企業法務に絞り、業務を集中特化することで培われたノウハウ・経験知に基づく法務の力で多くの企業の皆様の成長・発展に寄与する。
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