賞与(ボーナス)を巡る問題と団体交渉
虎ノ門法律経済事務所名古屋支店では、労働組合との交渉を有利に進めるための方法をご提案するとともに、解雇や未払残業代問題、休職問題など各テーマ別ノウハウに基づいたご支援をさせていただくことが可能です。合同労組やユニオンなどの労働組合との交渉でお困りの会社様は、是非一度当事務所にご相談ください。
本記事で書かれている内容
賞与(ボーナス)の支給を団体交渉の議題にされたら
賞与は、一般的に夏季賞与と年末賞与の2回にわけて支給されることが多いといえますが、支給すること自体は法律上義務付けられているわけではありません。労働協約、就業規則、労働契約、労使交渉、あるいは使用者の決定により支給額が確定してはじめて労働者は具体的な賞与請求権を取得することができます。
したがって、従業員が合同労組に加入し、組合から賞与の支給を求められたとしても、そもそも従業員はある特定の金額の賞与の支給を受ける権利を有していない、というのが基本的な使用者側の交渉スタンスとなります。
就業規則での(ボーナス)の定めをチェック
もっとも、就業規則などにおいて「賞与は基本給の2か月分を支払う」などと規定されているような場合には、既に金額が特定されているといえますので、他の規定も考慮する必要はありますが、従業員に賞与を請求する具体的な権利が発生していると評価される可能性があります。あるいは、そこまで特定されていなくとも、就業規則等において支給金額の算定方法・基準が明示されている場合には、それに基づいて算定された賞与額を請求できるともとれかねません。
したがって、賞与の支給を議題として団体交渉を申し入れられた場合には、まずは自社の就業規則等の定めを確認し、賞与請求権が具体的に発生していないかを確認する必要があります。
会社としての具体的対応
賞与は使用者の決定によって具体的な権利となるとしても、そこには功労報償的な意味のみならず生活補填的意味や勤労意欲の向上策といった意味もあります。団体交渉を申し入れられた以上は、会社は、労働組合からの要求に応じるか否かを検討し、要求に応じない場合にも、団体交渉の席において納得を得られるだけの説明をする必要があります。
賞与の支給を議題とする団体交渉においては、労働組合の方から金額を提示してくることがほとんどだと思います。この場合、さらに深堀をして、金額のみならずその請求根拠をより具体的に組合から説明させることで、後々の会社からの反論を行いやすくしておくことも重要です。
決算書の提出を求められたら
賞与は会社の業績とも連動していることが多いため、労働組合から会社の決算書を出すよう求められることがあります。本来、会社は決算書を従業員に開示する義務はありませんが、ここは団体交渉。使用者側に課せられた誠実交渉義務(労働組合法7条2号)との兼ね合いがありますので、ゼロ回答というわけにはいきません。必要な部分のみを抜粋するなどして、組合に会社の賞与に対する考えを説明していくことが大切です。
企業経営は売り上げや利益といった目に見える数字だけではなく、主力商品の将来性や取引先との関係、想定される事業リスクや為替相場、その他様々な業界を取り巻く要因を考慮して行われるものです。そうした事業環境など数字以外の要素も加味して説明し、リアリティーをもって経営者の方針・考えを説明することが説得力・納得感を生み出します。
団体交渉中に賞与支給日が来てしまったら
賞与の支給を巡り団体交渉を行っている最中に、賞与支給日が到来してしまうことがあります。この場合も慌てることはありません。労働組合との間で合意に至っていない以上、従業員に具体的な賞与受給権は発生していないのです。したがって、当該従業員への賞与の支給は行わずに、労働組合との交渉を続けていけばいいことになります。
むしろ、支給額を巡って組合と交渉しているにもかかわらず、勝手に会社が決めた金額を支払っては、ともすれば労働組合の活動を無視したものであるとして不当労働行為ととらえられかねず、余計にモメる原因となってしまいます。
なお、交渉相手である合同労組に加入していない従業員の賞与については、会社が決定した金額を支給して構いません。
団体交渉はあくまで組合員のために行われるものです。合同労組は、とりわけ個々の労働者の雇用関係上の問題を扱うことを活動実体としており、あくまで団体交渉は当該従業員との問題に限り行われているためです。団体交渉は原則として労働組合に加入していない他の従業員の雇用関係、労働条件に影響が及ぶものではありません。
当事務所では、予防法務の視点から、企業様に顧問弁護士契約を推奨しております。顧問弁護士には、法務コストを軽減し、経営に専念できる環境を整えるなど、様々なメリットがあります。 詳しくは、【顧問弁護士のメリット】をご覧ください。
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岐阜県出身。中央大学法科大学院卒業。経営者側に立った経営労務に特化し、現在扱う業務のほとんどが労働法分野を中心とした企業に対する法律顧問業務で占められている。分野を経営労務と中小企業法務に絞り、業務を集中特化することで培われたノウハウ・経験知に基づく法務の力で多くの企業の皆様の成長・発展に寄与する。
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