内部調査等に従事する者の守秘義務とは?-改正公益通報者保護法

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公益通報者保護法の改正

改正公益通報者保護法(以下「改正法」といいます。)が2022年6月1日より施行されます。公益通報により社内の不正を早期に発見することで、法的リスクが増大する前に対応することができますが、通報者自身に不利益が及ぶとなれば、公益通報を躊躇することになりかねません。
改正法は、事業者に対し、内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備等を義務付けるほか、内部調査等に従事する者に対し、通報者を特定させる情報の守秘義務を課し、通報者に不利益が及ばないようにしました。
ここでは、内部調査等に従事する者の守秘義務(改正法12条)に焦点を当てて解説していきたいと思います。

改正法12条

公益通報対応業務従事者又は公益通報対応業務従事者であった者は、正当な理由がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならない。

守秘義務を負う内部調査等に従事する者とは?

改正法は、守秘義務を負う主体について、「公益通報対応業務従事者」(以下「従事者」といいます。)と「従事者であった者」としています。
従事者が配置転換等により従事者でなくなった後も守秘義務を負うとすることで、通報者の保護を図ることができ、公益通報を躊躇することを防ぐことができます。
なお、従事者として指定されていない者が公益通報を受けた場合には本条による守秘義務の主体とはなりませんが、従事者以外の者が公益通報を受けた場合にも、改正法11条2項で求められる範囲外共有(公益通報者を特定させる事項を必要最小限の範囲を超えて共有する行為)等の防止に関する措置の対象になってきますので、漏洩することにより懲戒処分その他の措置を受ける可能性があり得ます。

守秘義務の対象となる情報とは?

守秘義務の対象となる情報は、「公益通報対応業務に関して知り得た事項」であって「公益通報者を特定させるもの」とされています。
「公益通報対応業務に関して知り得た事項」ですから、公益通報をしたことを私的に知った場合には守秘義務の対象となりません。

また、「公益通報者を特定させるもの」とは、公益通報をした人物が誰であるか認識することができる事項をいうとされており、典型例としては、公益通報者の氏名や社員番号などが挙げられます。

もっとも、一般的な属性であっても、その属性と他の事項とを照合されることにより、排他的に特定の人物が公益通報者であると判断できる場合には、「公益通報者を特定させるもの」に該当するとされています。

例えば、女性が1人しかいない部署内においては、その部署の者は、公益通報者が女性であることを知れば、誰が公益通報をしたかを排他的に認識することができるため、その部署の者に伝える場合には、女性という性別を伝えることも「公益通報者を特定させるもの」に該当することになります。

正当な理由がある場合とは?

守秘義務の対象となる情報を漏らしたとしても、「正当な理由」がある場合には、守秘義務違反とはなりません。
「正当な理由」がある場合とは、漏らす行為に違法性がないとして許容される場合のことをいいます。例えば、以下の場合が想定されます。
・公益通報者本人の同意がある場合
・法令に基づき開示する場合
・調査等に必要である範囲の従事者間で情報共有する場合
・ハラスメントが公益通報に該当する場合等において、公益通報者が通報対象事実に関する被害者と同一人物である等のために、調査等を進める上で、公益通報者の排他的な特定を避けることが著しく困難であり、当該調査等が法令違反の是正等に当たってやむを得ないものである場合
なお、公益通報者本人から同意を得る場合には、後日の紛争を避けるためにも、書面により同意を得ておくことが望ましいと考えられます。

守秘義務に違反した場合の効果

「従事者」や「従事者であった者」が守秘義務に違反した場合、改正法21条により刑事罰(30万円以下の罰金)の対象となるとされています。
なお、上司が指示をしたことにより、「従事者」や「従事者であった者」が守秘義務に違反した場合には、上司についても、本条の教唆犯が成立する可能性があります。

法改正の対応には専門家の支援を

ここでは、改正公益通報者保護法のうち12条の守秘義務について説明させていただきました。法改正があった場合、企業においては、自社の体制の点検・整備が必要となってきますが、その際には、弁護士や法律事務所などの労務の専門家の支援を受けながら、制度設計と運用をされることを強くお勧めいたします。虎ノ門法律経済事務所名古屋支店では、法改正への対応を検討されている経営者の方々を支援し、最適なリーガルサービスを提供させていただきます。

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