パワハラ対策が義務化!-パワハラ防止法

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パワハラに対する法規制

パワーハラスメント(パワハラ)は、セクハラやマタハラと並ぶハラスメントの代表例ですが、これまでパワハラそのものを規制する法律はありませんでした。しかしながら、都道府県労働局に寄せられる相談件数では職場における「いじめ・嫌がらせ」がトップを占め、あるいはパワハラによる精神障害の労災認定件数が増加するなど、その問題意識が高まり、法律による規制が求められるようになりました。
  
こうして、パワハラに対して法規制を行うことになったものが通称「パワハラ防止法」です。ここでは、パワハラ防止法の概要をご説明します。

パワハラ防止法

改正労働施策総合推進法

企業へのパワハラ対策の義務付けは、労働施策総合推進法の改正により行われ、この改正労働施策総合推進法が「パワハラ防止法」と一般に呼ばれています。
  
労働施策総合推進法は、「国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、労働に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする」(1条)法律です。この法律の中に、「第8章 職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置等」が規定され、パワハラ防止措置等の実施義務が事業主に課されることとなりました。

施行日

パワハラ防止法の措置義務等は令和2年6月1日から施行されますが、中小企業は令和4年3月31日までは努力義務とされ、その適用が2年間ほど猶予されています。

雇用管理上の措置義務

パワハラ防止法によって、企業には次の措置等が義務付けられました(パワハラ防止法30条の2)。

労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備等

パワハラ防止法は、雇用管理上の措置として、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」ことを使用者に課しています。
  
この措置義務の具体的内容は、厚生労働大臣が指針を定めることによって明示することになっています。

相談者等への解雇その他不利益取扱いの禁止

パワハラ防止法は、労働者がパワハラに関する相談を行ったこと又は当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないことを定めています。
  
これは、パワハラを受けた従業員は、相談しても解決にならない又は相談することにより職務上不利益が生じると考えて相談を行うことを躊躇しがちであるという実態を反映したものといえます。

事業主の責務

職場のパワーハラスメント問題の理解を深め、パワハラ防止が促進されるよう、国、事業主、労働者のそれぞれに、パワハラに関する責務が課されることになりましたが、使用者たる企業に課せられた責務は次のとおりです。

事業主の責務

使用者は、優越的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる広報活動、啓発活動等の措置に協力するように努めなければならないとされています(パワハラ防止法30条の3第2項)。
  
また、使用者、役員は、自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならないとされています(同条第3項)。

履行確保のための公表措置等

パワーハラスメントの行為者に対しては、それが暴行や脅迫といった刑罰法規に該当する場合を除き、パワハラであることのみを理由として刑事罰を科されることはありません。
  
もっとも、パワハラ防止のための雇用管理上の措置義務等の実効性を高めパワハラ防止を図るために、違反企業の公表等を行うことが定められました。

勧告に従わない場合の公表

厚生労働大臣は、パワハラ防止のための雇用管理上の措置や、パワハラに関する相談等に起因する不利益取扱い禁止等に違反している事業主に対し、必要があると認めるときは、助言、指導又は勧告を行うことができます(パワハラ防止法33条第1項)。
  
勧告を受けたにもかかわらず、その勧告に従わない企業は、その旨が公表され得ます(同条2項)。

報告の請求

事業主は、厚生労働大臣から、パワハラ防止のための雇用管理上の措置や、不利益取扱い禁止等のパワハラ防止法の施行に関し必要な事項について、報告を求められることがあります(パワハラ防止法36条)。

報告義務違反に対する罰則

上記の報告を求められたにもかかわらず、その報告をせず、又は虚偽の報告をすると、20万円以下の罰金に処せられ得ます(パワハラ防止法41条)。

パワハラ防止、メンタルヘルス対策には専門家の支援を

パワーハラスメントを含めたハラスメント問題については、その対応を誤れると紛争が深刻化するだけでなく、メンタルヘルスなどの労災問題に発展する危険性もあります。
  
各企業においては、パワハラ防止法を含めたコンプライアンス確保を充実させるとともに、問題が発生した際には迅速・的確に労働関係法規に精通した弁護士等の専門家から助言・指導を受けられる体制を普段から構築しておくことが望ましいといえます。


 

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