問題社員対応を見据えた就業規則の作り方とは?弁護士がポイントを解説!
はじめに
就業規則は会社のルールブックとなる非常に重要な規定です。
問題社員対応、残業代請求対応など労務問題のトラブルの際には必ずと言っていいほど確認をすべき内容になります。このため、有事を見据えた就業規則のチェック・改定を実施しておくことが非常に重要です。本コラムでは過去セミナー「こんな規定じゃ会社が負ける!? 問題社員対応に役立つ就業規則・規定の作り方」を基に、問題社員対応を見据えた就業規則作成のポイントについて解説いたします。
就業規則の要点とは?
就業規則の記載内容は、法改正や組織拡大に応じたチェック・改定が必要です。
就業規則の作成については下記コラムよりご確認ください。
問題社員対応を見据えた就業規則作成のポイントとは?
問題社員対応を見据えた就業規則作成のポイントは大きく3つです。
「休職規定」「懲戒規定」「賃金規定」を押さえておくことが重要です。
下記に3つのポイントについての要点を解説させていただきます。
①休職規定について-メンタルヘルス不調等の社員対応
■「休職」の意味
雇用契約は維持されているのに労働義務を免除ないし禁止
労働義務不履行 → 解雇 が本来のところ、解雇を猶予
■「欠勤」なのか「休職」なのかを峻別
いつまでが「欠勤」で、いつからが「休職」なのか
「休職」は本来的に労働者の権利ではない
■「復職」させるのか「退職」させるのかの判断
休職期間中の状態把握
主治医面談を含めた手続きの重要性
②懲戒規定 – 犯罪行為等の私生活上の非行への対応
■私生活上の非行と懲戒
企業の社会的評価を害する場合には懲戒の対象となる
行為の性質、情状、会社の事業内容、社員の地位等を考慮
■懲戒処分と公平性
同種事案について過去の先例との公平性
「黙認」がいざというときの足かせとなる
■「犯罪」であっても「有罪」となるとは限らない
逮捕されても起訴されないことは多い
起訴されても有罪判決までは時間がかかる
③賃金規定 – 問題社員対応時の賞与不支給
■賞与は原則として労働者に請求権はない
賃金規定の内容には注意が必要
業績のみならず、労働者各人ごとに差をつけることが可能
■支給時期と支給対象期間
試用期間を対象期間に含めるか否か
退職者と支給日要件
■合理性の担保
非違行為、問題行為の痕跡を残す
支給・不支給、支給額差異についての実績
問題社員対応・就業規則作成・チェックについては弁護士にご相談ください。
ここでは問題社員対応を見据えた就業規則作成のポイントについて説明をさせていただきました。就業規則に関しては、このほかにも労働者からの意見聴取や労基署長への届出、あるいは就業規則の具体的な定め方など、法的事項を踏まえて検討を行い、使用者が予期しない不利益を被らないように適切に作成・変更・運用をする必要があります。
労働規制は複雑なうえに、その理解と運用を誤れば経営を揺るがしかねない大きなリスクを企業にもたらします。労務管理については、労働問題に強い弁護士などの労務の専門家の支援を受けながら、制度設計と運用をされることを強くお勧めいたします。真面目に経営をされている経営者の皆様が、法を「知らなかった」、あるいは「軽んじていた」がために、苦しい思いをされることが少しでもなくなるようにと願っています。
▼関連記事はこちらから▼
弁護士による問題社員対応、解雇・雇止めについて-モンスター社員対応の勘所-
岐阜県出身。中央大学法科大学院卒業。経営者側に立った経営労務に特化し、現在扱う業務のほとんどが労働法分野を中心とした企業に対する法律顧問業務で占められている。分野を経営労務と中小企業法務に絞り、業務を集中特化することで培われたノウハウ・経験知に基づく法務の力で多くの企業の皆様の成長・発展に寄与する。
関連記事はこちら
- 問題社員対応を見据えた就業規則の作り方とは?弁護士がポイントを解説!
- 【コラム】年功序列型賃金の限界と人事制度改革
- 【コラム】年休取得時に支払う賃金-各種手当は「通常の賃金」に含まれるか
- 退職した従業員から損害賠償請求をされた際の会社側の対応方法とは?事例を基に弁護士が解説!
- 在宅勤務のための費用は会社が負担すべきか?-テレワークにおける費用負担
- 身元保証契約には極度額の定めが必須!-民法改正への対応
- テレワーク導入の手引き‐弁護士がすすめるテレワーク規定の要点と成果を上げるための4つの視点
- 経営上の理由により従業員を休ませる場合の対応‐休業補償と政府による休業支援策
- 年5日の年次有給休暇の取得が義務化
- 「残業代込みの給料」-定額残業代制の留意点
- 季節により繁閑がある場合は1年単位の変形労働時間制で時短を
- 予期しない残業代請求を受けないための就業規則の規定と運用
- 間違えると取り返しがつかない!-就業規則「賞与(ボーナス)」の定め方
- 就業規則における懲戒の定め方について解説!~出勤停止の期間について~
- 変形労働時間制は運用が鍵!
- 労働条件の不利益変更-就業規則の修正・変更は自由にできるか?
- 就業規則がなければできないこと
- 従業員への貸付金の返済金を賃金から適法に控除する方法
- 就業規則に潜む危険-雛形をそのまま使っていませんか?
- 働き方改革③-高度プロフェッショナル制度(脱時間給制度)とは
- 働き方改革②-同一労働同一賃金とは
- 働き方改革①-新しい残業規制とは
労働コラムの最新記事
- 退職時の誓約書拒否された際の対応方法について弁護士が解説
- 社用車の自損事故での自己負担の割合とは?従業員に弁償させたい場合の流れについて弁護士が解説!
- 競業避止義務を定めた誓約書提出の強制・義務付けの可否~違反した場合・誓約書の効力について~
- 【コラム】退職後の競業避止義務違反を防ぐ! -競業避止契約と違約金の定め-
- 【コラム】競業避止義務に違反した退職社員に対して退職金の返還請求をする!
- 【コラム】年功序列型賃金の限界と人事制度改革
- 【コラム】同業他社への転職を防ぐ誓約書作成の勘所 - 抑止力ある競業避止義務を課すために
- 【コラム】年休取得時に支払う賃金-各種手当は「通常の賃金」に含まれるか
- 【コラム】業務上の負傷・疾病で療養・休業を続ける従業員を解雇できるか?
- 【コラム】運送業者必!歩合給の制度設計と賃金制度変更の手引き
- 【コラム】運送業者必見!残業代リスクを大幅に軽減する賃金制度設計
- 【コラム】運送業者必見!高額化する残業代請求リスクに備えあれ
- 内部調査等に従事する者の守秘義務とは?-改正公益通報者保護法
- 実労働時間がタイムカードの打刻時間どおりでない場合
- 退職した従業員から損害賠償請求をされた際の会社側の対応方法とは?事例を基に弁護士が解説!
- 雇い入れ時の健康診断は省略可能か?-定期健康診断での代用・入社後/退職予定者への対応策について!-
- 36協定の締結を労働組合に拒否された!-残業・時間外労働・結びたくないと言われた会社にとってのデメリットとは?弁護士が解説!
- 70歳までの継続雇用-改正高年齢者雇用安定法に対する企業の向き合い方
- 経歴詐称の社員を解雇したい!
- 社員が始末書を提出しない!
- 懲戒処分の社内公表はどこまで可能?社内通知に注意点・判断基準について弁護士が解説!
- 企業の採用の自由と調査の自由
- 定年後再雇用を辞めさせる方法はありますか?-継続雇用制度と嘱託社員の雇止め・再雇用者の契約終了(契約打ち切り)について弁護士が解説!
- コロナ禍における労務対応‐在宅勤務とフレックスタイム制
- 懲戒処分には弁明の機会の付与が必要?-懲戒解雇の進め方や団体交渉への弁護士の同席について解説!
- 傭車運転手からの団体交渉‐業務請負者と労組法上の「労働者」
- 移動時間と労働時間について-出張での移動時間や勤務時間について弁護士が解説!-
- 退職勧奨はどこまでできる?-「辞めるつもりはない」とはっきり言われたら
- 有期契約社員の雇止め-契約社員から雇止めが不当だと主張されないために
- 濫用的年休申請への対処法
- 余剰人員の削減!でも中小企業が整理解雇を行う前にやるべきこと
- タイムカードでの残業代・残業申請について弁護士が解説!打刻での時間外労働の計算方法について
- 在宅勤務のための費用は会社が負担すべきか?-テレワークにおける費用負担
- 企業の街宣活動への対応方法とは?-違法となる場合・街宣車がうるさい場合は通報できる?-
- 身元保証契約には極度額の定めが必須!-民法改正への対応
- 不況時の人員削減‐中小企業のための整理解雇実行の手引き
- 派遣事業の適法性リーガルチェック‐派遣業と請負業
- 派遣先から減産による休業措置がとられたら‐休業時に派遣会社がとるべき対応
- 団体交渉で休業補償100%を求められたら‐休業と休業手当
- テレワーク導入の手引き‐弁護士がすすめるテレワーク規定の要点と成果を上げるための4つの視点
- 経営上の理由により従業員を休ませる場合の対応‐休業補償と政府による休業支援策
- 労働者派遣契約-契約事項と情報提供義務
- 労働者派遣事業の許可‐派遣事業を始める方へ
- 派遣労働者の同一労働同一賃金
- パワハラ対策が義務化!-パワハラ防止法
- 労働者の健康管理-医師による面接指導義務
- 社内に労働組合ができたらどう対応するか‐労働組合の要件
- 労基法改正-新たな残業規制
- 年5日の年次有給休暇の取得が義務化
- 経営者必見!定額残業代制に関する重要判決と時代の変化への対応
- 経営者必見!定額残業代制が否定された場合の三重苦
- 労災事案の賠償請求に対する使用者側対応と労災保険
- 外国人労働者への労働関係法令の適用と社会保険
- 不法就労の防止と対応
- 外国人技能実習生の受入手続
- 派遣労働者への労働条件の通知と就業条件の明示
- 労働者派遣期間の制限と適正な運用
- 相次ぐ技能実習認定の取消し‐外国人材受入れ企業はより一層のコンプライアンスを
- 派遣契約の終了と派遣労働者の処遇
- 「残業代込みの給料」-定額残業代制の留意点
- 季節により繁閑がある場合は1年単位の変形労働時間制で時短を
- 予期しない残業代請求を受けないための就業規則の規定と運用
- 間違えると取り返しがつかない!-就業規則「賞与(ボーナス)」の定め方
- 就業規則における懲戒の定め方について解説!~出勤停止の期間について~
- 残業代に含まれる手当とは?計算方法について弁護士が解説-基礎賃金に含まれる手当とは?家族手当は含まれる?残業手当・固定残業代について弁護士が解説!-
- 問題社員対応事例③(従業員に損害賠償を請求したい!)~モンスター社員対応~
- 変形労働時間制は運用が鍵!
- 行き詰った団体交渉を打破する‐あっせん手続の活用
- 残業代請求を和解で解決する場合の注意点-和解と賃金債権放棄
- 労働委員会への救済申立てに対する対応
- 降格処分はこう使う!
- 無期転換ルールへの対応-有期契約社員の更新、雇止めと就業規則の改定
- 日常業務に関する事項と団体交渉
- 労働条件の不利益変更-就業規則の修正・変更は自由にできるか?
- 就業規則がなければできないこと
- 従業員への貸付金の返済金を賃金から適法に控除する方法
- 残業許可制でダラダラ残業を防ぐ!
- それって労働時間にあたるの?-手待ち時間の労働時間該当性
- 就業規則に潜む危険-雛形をそのまま使っていませんか?
- メンタルヘルス問題と使用者の損害賠償責任
- 円満に内定取消を行う方法
- 求人票記載の給与額と契約上の給与額
- 経営事項と団体交渉
- 賞与(ボーナス)を巡る問題と団体交渉
- 会社を守る36協定の締結方法
- 残業単価の計算方法とは?-時間単価・労働時間について弁護士が解説!-
- メンタルヘルス不調社員対応のポイント
- 使用者のためのマタハラ、育児・介護ハラスメント対応の手引き
- 「残業代」とは何か?- 割増賃金が発生する3つの「労働」
- 残業時間の立証-使用者による労働時間の適正把握義務
- 管理職と残業代請求-管理監督者とは
- 恐ろしい残業代未払いに対するペナルティとは?残業代請求は拒否できる?-遅延損害金についても弁護士が解説!-
- 問題社員対応事例②(従業員が会社のお金を横領した!)~モンスター社員対応~
- 問題社員対応事例①(ローパフォーマー社員を辞めさせたい!)~モンスター社員対応~
- 使用者のためのセクハラ・パワハラ問題対応の手引き③(パワハラ編)
- 使用者のためのセクハラ・パワハラ問題対応の手引き②(セクハラ編)
- 使用者のためのセクハラ・パワハラ問題対応の手引き①(基礎知識編)
- 使用者側・労働審判を有利に導く10のコツ Part3
- 使用者側・労働審判を有利に導く10のコツ Part2
- 使用者側・労働審判を有利に導く10のコツ Part1
- 懲戒処分を行う場合の留意点
- 退職金の減額・没収・不支給
- 能力・適格性が欠如する問題社員対応のポイント
- 雇止めと団体交渉
- 解雇無効についての団体交渉
- 未払い残業代請求についての団体交渉
- 団体交渉を有利に進める方法
- 元従業員との団体交渉
- 団体交渉に弁護士を入れることのメリット
- 団体交渉申入書が届いたら
- フレックスタイム制の活用法
- 働き方改革③-高度プロフェッショナル制度(脱時間給制度)とは
- 働き方改革②-同一労働同一賃金とは
- 働き方改革①-新しい残業規制とは