未払い残業代請求についての団体交渉
虎ノ門法律経済事務所名古屋支店では、労働組合との交渉を有利に進めるための方法をご提案するとともに、解雇や未払残業代問題、休職問題など各テーマ別ノウハウに基づいたご支援をさせていただくことが可能です。合同労組やユニオンなどの労働組合との交渉でお困りの会社様は、是非一度当事務所にご相談ください。
本記事で書かれている内容
従業員から未払い残業代に関して団体交渉が申し込まれた場合、会社はどのように対応すべきか?
労働組合を介して時間外労働の割増賃金の支払請求をする従業員や元従業員の方は多く、未払い残業代請求の問題は団体交渉における主要なテーマの一つと言えます。
団体交渉の申し入れ段階では、具体的な計算根拠や金額が示されていないこともよくあります。そうした場合は、まずは組合側に請求の根拠と請求額を提示させることが大事です。第1回目までに確定的な結論を出す必要はありませんので、労働組合側を牽制しつつ、会社側でも未払いとなっている残業代の有無および金額を調査、検討を進めていきます。
タイムカードや就業規則の提出を求められたときの対応
労働組合から、未払い残業代の金額を計算するためにはタイムカードや就業規則が必要だと言われ、その提出を求められた場合、会社としてはどのように対応すべきでしょうか?
経営者の方の中には、対立する相手に資料を渡すなんてとんでもない、といった感情を持たれる方や、タイムカードなどの会社側の資料を渡してしまうと自分たちが不利になるのではと心配される方も多いのではないでしょうか。タイムカードを出すのは絶対にイヤだといって、タイムカードを廃棄処分してしまった方も実際にいらっしゃるほどです。
しかしながら、タイムカードで勤怠管理がされていたという実体が明らかな場合、このタイムカードは遅かれ早かれ提出せざるを得ません。もし訴訟に移行した場合には、裁判官から手厳しく提出を求められることは目に見えていますので、素直に提出することが間違いのない対応です。
タイムカードを提出して、労働組合側に彼らが考える時間外労働の割増賃金を計算させ、先に請求させます。実は、労働組合が計算した金額と、会社側で計算した金額が異なることが多くあります。労働組合側の不手際によって会社にとって有利な金額が出される可能性もありますので、まずは労働組合に請求をさせるということが大事です。
【スタジオツインク事件(東京地判平成23年10月25日)】
「時間外労働等を行ったことについては、同手当の支払を求める労働者側が主張・立証責任を負う」ものであるが、「他方で、労基法が時間外・深夜・休日労働について厳格な規制を行い、使用者に労働時間を管理する義務を負わせているものと解されることからすれば、このような時間外手当等請求訴訟においては、本来、労働時間を管理すべき使用者側が適切に積極否認ないし間接反証を行うことが期待されているという側面もあるのであって、合理的な理由がないにもかかわらず、使用者が、本来、容易に提出できるはずの労働時間管理に関する資料を提出しない場合には、公平の観点に照らし、合理的な推計方法により労働時間を算定することが許される場合もある」
この裁判例からも分かるとおり、使用者においてタイムカード等の労働時間管理に関する資料の提出が容易であることが想定されるにもかかわらず、これを提出しない場合には、裁判では、タイムカードなしで、労働者側の主張に沿う内容で時間外労働時間が計算されてしまうリスクがありますので注意が必要です。
落としどころを決める
交渉に臨むに当たっては、会社側が目指すべき落としどころを明確にしておく必要があります。どう考えても不当請求という事案は別にして、いくらかの未払い残業代が発生している可能性はありますので、もし裁判で判決となったらいくらになるか、ということを計算しておく必要があります。裁判となれば、遅延損害金や残業代と同額の付加金が発生する可能性もありますので、こうしたものも計算に含めて訴訟となった場合の支払額を計算します。
そうした計算を踏まえて、団体交渉で解決する場合の有利性を検討し、いくらまでなら団体交渉による解決に価値を見いだせるかということを理解しておく必要があります。
落としどころを明確にしておくことは、交渉を有利に運ぶためには必要不可欠な準備事項といえるでしょう。
なお、団体交渉での解決が有利と判断する場合であっても、労働組合側が不当といえるほど高額な金額を要求している場合もありますので、毅然と対応することがその基本にあることは言うまでもありません。
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岐阜県出身。中央大学法科大学院卒業。経営者側に立った経営労務に特化し、現在扱う業務のほとんどが労働法分野を中心とした企業に対する法律顧問業務で占められている。分野を経営労務と中小企業法務に絞り、業務を集中特化することで培われたノウハウ・経験知に基づく法務の力で多くの企業の皆様の成長・発展に寄与する。
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