使用者側・労働審判を有利に導く10のコツ Part1

虎ノ門法律経済事務所名古屋支店では、「労働審判」を有利に進める方法をご提案するとともに、過去の事例に基づく最適なご支援を実施致します。「労働審判対応」でお困りの企業様は、ぜひ一度当事務所にご相談ください。

①弁護士との打ち合わせはASAP

労働審判の申立書が会社に届いたら、弁護士との打ち合わせをすぐに入れることが鉄則です(as soon as possible)。

■準備期間が短い

労働審判は、原則として、申立てがなされてから40日以内に第1回期日が設定されます(労働審判規則13条)。また、申立てに対する会社側の主張をまとめた答弁書は、第1回期日の1週間前(名古屋地裁では10日前)に提出することが求められています。つまり、申立てがなされてから、わずか1か月足らずで会社側の労働審判対応の準備を整える必要があるのです。

■打合せは最低3回必要

その短い時間で、次の内容の打ち合わせを弁護士と行う必要があります。

(1)概要把握

労働審判の申立内容、労働審判を申し立てられた経緯、会社の雇用制度、労務管理の状況等を把握することから打ち合わせがはじまります。そのうえで、会社側の主張の大まかな方向性について協議します。

(2)答弁書作成

弁護士が法的論拠に基づき会社側の主張をまとめていきますが、そのための事実関係や証拠を整理するための打ち合わせを行います。

(3)想定問答

労働審判期日では、当事者本人が審判官(裁判官)や審判員から直接質問を受けて応える審尋が行われます。当事者(会社代表者や担当者)自身の口から説明することが求められますので、想定問答を事前に準備し、リハーサルをしておくことが大切になります。

②労働審判の特徴を押さえておく

「労働審判は未経験」という会社がほとんどではないかと思います。紛争解決手段としての労働審判には独特の特徴があります。労働審判に臨むにあたっては、その特徴を押さえておかないと、せっかく有利な解決ができる状況を作れたとしても、的確な判断ができません。労働審判は短期決戦であるがゆえに、会社側にも即断・即決が求められます。
労働審判の特徴としては、大きくは次の5つを挙げることができますが、詳しい内容については事前にしっかりと弁護士から説明を受けておきましょう。

(イ)3回以内に終結

主張・立証は第2回期日の終了まで(労働審判規則27条)。
第1回期日で調停が成立することも多く、第2回目までにはほとんどが終結します。

(ロ)調停による解決を目指す制度

調停とは「和解」を意味します。つまり、申立人、相手側双方に何かしらの譲歩が求められます。一分たりとも譲歩する余地はない、という場合は労働審判を直ちに終結するよう申し入れることになります。
なお、名古屋地裁の労働審判では、係属する事件のうち約7割~8割の事件で調停が成立しています。これは全国平均と比べても5~10ポイント程度高い調停成立率であり、多くの事件が調停によって解決している実情があります。
調停=和解で終わらせるとしても、いかに会社側有利な内容で解決できるか、という点が当然大事となってきます。

(ハ)労使の専門家が審判員として関与

労働者側、使用者側の専門家が審判員に加わり、審判官とともに労働審判委員会を構成します。専門家といっても法律の専門家ではありませんので、必ずしも労働法規に熟知しているとは限りません。経験知を期待されているところが大きく、やはり審判官が手続き全体を主導しています。

(ニ)当事者本人に対する審尋

第1回期日において、当事者本人(会社側は代表者又は担当者)に対する事情聴取が行われます。この事情聴取は当事者双方が同席のうえで行われます。
ここでの重要なポイントは、聴取の対象者が代理人ではなく当事者本人であるということです。主張の不明点、疑問点、対立事項等について質問がなされますので、的確に回答できるよう、事情聴取への対策が重要となってきます。

(ホ)権利関係を踏まえた解決

労働審判は調停による解決を目指す制度ですが、その解決は「当事者間の権利関係を踏まえ」なされます(労働審判法1条)。調停による解決に至らない場合、労働審判委員会は「審判」によって事件に対する判断を下すことになりますが、その審判は「審理の結果認められる当事者間の権利関係及び労働審判手続の経過を踏まえて」行われます(同20条)ので、調停はこの審判を見据えながら進められていきます。
もっとも、労働審判では主張・立証に対する制約が大きいことから、その認定・判断は概括的にならざるを得ないという特徴があります。この特徴をうまく活かすことが会社有利な解決を導く重要なポイントとなります。

③期日設定についての裁判所との交渉

■期日は一方的に指定されるのが原則

労働審判官は、労働審判期日を定めて当事者を呼び出します(労働審判法14条)。この期日指定は一方的に行われるため、会社代表者や代理人となる弁護士の都合がつかないという事態もありえます。その場合は、裁判所に対し期日変更の申立を行う必要がありますが、時期を逃すとこの変更は認めてもらえませんので注意が必要です。

■交渉段階から代理人がついている場合は別

労働審判が申し立てられる前の交渉段階から会社側に弁護士が代理人として付いている場合、通常申立て時にそのことが裁判所にも明らかとなっています。そうした場合、名古屋地裁の運用では、期日指定前に会社側弁護士へ連絡があり、労働審判対応についても委任を受ける予定か否かの問い合わせがあり、受ける場合には期日の予備調整を行ってくれます。
そのため、期日調整の点や迅速な準備を行うためにも、従業員側から何かしらの請求や要求が会社に対してなされた場合には、その段階で弁護士に相談し対応を依頼するというのが本来的には望ましいといえます。


 

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