外国人労働者への労働関係法令の適用と社会保険

虎ノ門法律経済事務所名古屋支店では、法的な視点から就業規則の作成・変更・届け出に関するご提案をするとともに、解雇や未払残業代問題、休職問題など各テーマ別ノウハウに基づいたご支援をさせていただくことも可能です。外国人雇用の問題でお困りの会社様は、是非一度当事務所にご相談ください。

労働関係法令の適用

外国人労働者であっても、次のような労働関係法令・社会保険関係法令は、日本人と同様に適用されます。使用者は、雇用する労働者が外国人であっても、日本人労働者と異なることなく各関係法令に従った処遇や手続きを履行する必要があります。
  
・労働基準法
・最低賃金法
・労働安全衛生法
・労働者災害補償保険法
・雇用対策法
・職業安定法
・労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
・雇用保険法
・健康保険法
・厚生年金法 など
  
なお、労働基準法3条は、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と規定しています。使用者には、日本人、外国人を差別することなく、職務の内容等の実態に即して処遇をすることが求められています。

社会保険と社会保障

社会保険への強制加入

外国人労働者を雇用した場合、外国人労働者も日本人労働者と同様に、労災保険、雇用保険、健康保険及び厚生年金保険への加入が義務付けられます。
  
なお、保険の種類によっては内容や手続が日本人労働者と異なる場合もありますので、雇用する外国人労働者の雇用期間や所定労働時間、在留資格、母国名等を把握したうえで、担当行政機関に手続き等を確認いただければと思います。

外国人労働者への説明

特に途上国出身の外国人などは、母国に社会保障制度が整備されていないこともあり、日本の社会保障制度への理解が乏しいことがあります。賃金から社会保険料が控除されることに不信感を抱かれないためにも、雇用前から社会保険関係の説明を十分に行っておくことが大切です。

社会保険の説明事項

・加入義務のある保険名
・外国人労働者が負担する保険料額
・保険料が毎月賃金から控除されること
・各保険の給付内容

特に理解を得ておくべき事項

・社会保険は法律によって加入が強制されていること
・社会保険には病気やケガをした場合、又は死亡した場合等に各種年金等の保険給付が得られるメリットがあること
・脱退一時金を受給できること

社会保障協定と年金加入の免除

母国に社会保障制度が整備されている外国人の場合、母国の社会保障制度と日本の年金制度へ二重に加入することになり、また、日本での加入期間が短く年金を受領できない外国人にとっては保険料を無駄に支払うことになり不合理とも言えます。こうした二重加入や年金受給資格についての問題を解決するため、社会保障協定を締結している国の外国人には、次のような特例が認められることとなっています。

① 日本に在留する見込み期間が5年を超える場合

日本の年金制度への加入のみでいい

② 日本に在留する見込み期間が5年以内の場合

母国の制度への加入のみでいい
一部の国を除き、他国での加入期間は通算されます。

国ごとに協定の内容を確認する

協定の相手国によって、年金だけでなく健康保険(公的医療保険)についても協定されていることもあり、協定の内容は国ごとに異なります。外国人を雇用する際は、協定締結国の協定内容を確認するようにします。
なお、2019年時点での協定締結国は次のとおりです。
  
・ドイツ ・イギリス ・韓国 ・アメリカ ・ベルギー ・フランス
・カナダ ・オーストラリア ・オランダ ・チェコ ・スペイン
・アイルランド ・ブラジル ・スイス ・ハンガリー ・インド
・ルクセンブルク ・フィリピン
  
在留外国人の多くを占める東南アジア諸国では、フィリピンのみが社会保障協定の締結国となっています。

脱退一時金の受給

社会保障協定を締結していない国の外国人労働者の場合は、脱退一時金という制度が用意されています。年金に加入したにもかかわらず、受給資格を満たさないために年金を受給できない外国人は、脱退一時金を受け取ることができます。
  
したがって、外国人労働者を雇用する際には、この脱退一時金制度の説明を行い、理解と納得を得ておくべきです。また、退職する際には手続きを忘れないようにします。

外国人労働者の雇用と届出義務

外国人労働者を雇用する場合は、日本人とは異なり、所定の事項を公共職業安定所(ハローワーク)へ届出をする必要があります。
  
ハローワークへの外国人雇用状況届書の提出は、外国人労働者を採用したときと、外国人労働者が退職した時の両方で必要となります。
  
また、雇用保険に加入しない短期間のパートタイマーや留学生アルバイトを雇用した場合でも届け出が必要となりますので、怠らないよう注意します。

外国人雇用企業は専門家による継続的な支援体制の整備を

外国人を雇用するにあたっては、募集や採用、雇用中の労務管理も含めて日本人とは異なる注意事項が多々あります。労働関係法令はもちろんのこと、入管法等の外国人特有の関係法令をしっかりと理解することが企業には求められています。コンプライアンスを充実させ、あるいは問題事由が発生した場合にも迅速かつ的確な対応が取れるよう、各企業は入管法、労働関係法令、技能実習法等の関係法規に精通した弁護士等の専門家から継続的に助言・指導を受けられる体制を構築しておくことが望ましいといえます。


 

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