雇止めと団体交渉

虎ノ門法律経済事務所名古屋支店では、労働組合との交渉を有利に進めるための方法をご提案するとともに、解雇や未払残業代問題、休職問題など各テーマ別ノウハウに基づいたご支援をさせていただくことが可能です。合同労組やユニオンなどの労働組合との交渉でお困りの会社様は、是非一度当事務所にご相談ください。

非正規労働者と「雇止め」


「雇止め」はいわゆる非正規労働者の退職に関する労働問題です。非正規労働者には、日雇い、アルバイト、パート、契約社員など様々な呼称がありますが、多くの場合で労働契約に期間の定めがあるために、正社員と区別された「非正規」社員に位置づけられているものです。最近では、人手不足の影響から、一部の大企業では非正規社員の正社員化等を進めている企業も増えていますが、中小企業では経営の安定と労働需要の調整の観点から今後も非正規社員を活用せざるを得ないと言えるでしょう。
  
2000年代後半には雇用労働者に占める非正規労働者の割合が3分の1にまで増加したとも言われていますが、それがために非正規労働者を保護するために様々な法規制が生まれてきました。「雇止め」をした非正規社員が、合同労組・ユニオンに加入し、雇止めの違法性を主張してきた場合、企業は、非正規労働者に関する法規制を念頭に入れ、適切な対応をとる必要があります。

雇止めと解雇は違う

労働組合によっては、「雇止めも解雇と同じだ」ということを主張してきますが、いわゆる「解雇」と「雇止め」は法的には異なる概念です。
期間の定めのある労働契約は、その名のとおり契約で定めた期間だけ雇用関係が成立しています。したがって、一定期間が経過すれば雇用契約は終了し、契約を更新(再契約)するか否かは企業の自由であることが大原則です。有期労働契約はもともとこうした性格をもった雇用契約ですので、このことを踏まえて法規制を理解し、雇用管理を適切に行っていくことで、「雇止め」が労働問題となるリスクを最小限に抑えることが可能です。
これまで労働法制に対する理解が不足し、それがために雇用管理が不適切だった場合は、今後同様な問題が起こらないよう予防法務をしっかりと施していくことが必要です。

雇止め法理

有期労働契約の雇止めについては、数々の裁判例が集積した結果、法律によってその有効・無効についての基準が定められました。次の場合には、雇止めに客観的に合理的な理由と相当性が必要となり、これを欠く場合には雇止めは無効となります(労働契約法19条)。
1. 過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの
2.労働者において有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの

つまり、有期の契約であってもそれが反復更新されて実際上常用化されているような場合と、契約更新につき合理的な期待が認められる場合には、更新拒否については客観的に合理的で社会通念上相当な理由が必要となるということです。

判断要素

では、具体的にはいったいどのような点が考慮されて、有期労働契約が「常用化」されている、あるいは契約更新に「合理的な期待」があるといえるのでしょうか。裁判例における考慮要素を端的にまとめると、次のような点が考慮されています。
イ) 当該雇用の臨時性・常用性
ロ) 更新の回数
ハ) 雇用の通算期間
ニ) 契約期間管理の状況
ホ) 雇用継続の期待をもたせる言動・制度の有無

なお、契約更新に対する合理的な期待は、有期労働契約の締結時から雇止めまでの一切の事情が考慮されますので、期間満了の直前に更新しない旨の通知をしたとしてもそれがために合理的な期待が否定されるわけではありませんので、注意が必要です。

交渉には方針を明確にして臨むべし

以上の雇止め法理を理解し、会社が行った従業員の雇止めの有効性を見極めます。仮に裁判となった場合に、会社の主張が認められる余地はどれくらいあるのか、もし雇止めが無効となった場合に負うことになる金銭的リスクはどれくらいか、などをしっかりと把握することが必要です。見通しをしっかりと立てることができれば自身をもって交渉に臨むことができますし、話し合いでの解決に妥協点を見出すことが可能となります。

従業員側が弁護士をつけて裁判を提起する場合に比べ、場合によっては労働組合との間の団体交渉で決着をつける方が解決スピード、金銭的負担の面で会社にとって望ましいことも多くありますので、団体交渉には入念な準備の上しっかりと方針を立てて臨み、最良の解決を目指しましょう。


 

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