使用者側・労働審判を有利に導く10のコツ Part3
虎ノ門法律経済事務所名古屋支店では、「労働審判」を有利に進める方法をご提案するとともに、過去の事例に基づく最適なご支援を実施致します。「労働審判対応」でお困りの企業様は、ぜひ一度当事務所にご相談ください。
本記事で書かれている内容
⑦解雇無効の請求では審判委員の感情に触れるべし
会社が従業員を解雇した場合に、その過程で弁護士等の関与がないケースでは、解雇の有効性を満たしていないことも多く、会社にとって厳しい戦況となりやすい事件類型が解雇無効(地位確認)の事件です。しかしながら、そうした過酷な状況下であっても、労働審判の特徴を踏まえた戦術をとることで、会社有利な解決へと導くことも可能となります。
解雇制度についての認識のギャップ
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効となります(労働契約法16条)。「権利を濫用」というぐらいですから、よっぽど会社側に悪質性が認められる場合のみ解雇が無効となるかのようにも思えますが、実際は逆です。この点が、経営者の方の認識と法律との間に大きなギャップがあるところです。
例えば、勤務成績不良、能力不足が顕著な社員であったとしても、それが経営に支障を生ずるなどして企業から排斥すべき程度に達していることを要するとも言われています。
したがって、従業員を解雇するにあたっては、事前にその有効性について法的な検討を行い、周到な準備の上で行うべきものといえますが、そうした事前検討なしで解雇が行われているケースも多いのが実情です。
会社側に同情すべき事情を訴えるべし
会社が法的観点からの事前検討不十分なまま従業員を解雇したケースであっても、会社側が解雇という苦渋の選択をせざるを得なかった背景には、それ相応の事情があるのが普通です。そうした事情を丁寧かつ効果的に拾い上げ、過去の裁判例等と照らして本件がいかに解雇相当な事案であるか否かを訴えかけます。
ここで大事なのが、労働審判の特徴を活かすことです。労働審判は3回以内の短期決戦であるがゆえに、事実認定と法適用は概括的にならざるを得ません。仮に解雇が有効とまではいかなくとも、会社側に有利な事実(会社側に同情すべき事実)を審判委員に説得的に訴えることができ、それらを理解してもらうことができれば、会社有利な解決も不可能ではありません。
従業員側の心理を読む
従業員側が解雇の無効を争う場合、労働審判の申立は「従業員としての地位確認」を求めて行われることが一般的です。つまり、「解雇は無効だから自分はまだ従業員であって、会社で働くことを認めろ」というものです。
もっとも、中小企業の場合は特に、法的紛争にまで発展している会社に戻りたいという従業員は稀なのが現実ではないでしょうか。申立人である従業員が、本当に職場に戻るつもりがあるのか否か、職場に戻るつもりはなく金銭解決を求めているのかを見極めることは、会社の戦術を考える上での重要なポイントとなります。
⑧想定問答は必ず行うべし
審尋は事前準備が成否を分けます。必ず審尋の想定問答を行いましょう。
第1回期日での審尋
第1回期日では、会社代表者または担当者に対する事情聴取が行われます。ここでは、答弁書に記載している会社の主張についての事実確認や不明な点を確認するとともに、主張していることが本当か否かという信用性についても見られています。また、代理人がその場で助言を行うことはできますが、これはあくまで当事者本人に対する事情聴取であることから、会社代表者または担当者が自身の口で語る必要があります。
しどろもどろの受け答えをしたり、一貫性や合理性を欠く話をしていては、会社有利の事実を認定してもらえないばかりか、主張の信用性を失い、イメージ悪化によって審判委員から一方的に厳しい判断を示されかねません。
第1回期日がまさに天王山ですので、入念な事前準備が求められます。
労働法規への理解を示す
会社の主張の正当性は、当然ながら労働法規に根差すものでなくてはなりません。事情聴取の中で会社代表者や担当者が労働法規への無理解を露呈してしまえば、遵法精神がない会社とみられて心証悪化は避けられません。第1回期日の前に、しっかりと労働法規について改めて再確認しておく必要があります。
会社の立場を明確にする
労務分野については、それが完璧な会社というのは滅多にありません。主張に弱い部分があることも当然です。そうした会社側の弱点についてはやはり審判委員から問われやすいため、その点についてどのような立場で臨むかということもあらかじめ明確にしておくことが大事です。
⑨NG行為にご注意
労働審判において次のような態度や対応は、会社に不利となります。是非とも注意したいところです。
イ)聞かれたことに答えない、答えられない
ロ)独りよがりの価値観を展開する
ハ)審判官の発言を遮って発言する
ニ)感情的に苛立ちを示す
ホ)主張・立証を第1回期日までにすべて行わない
ヘ)調停についての方針を検討していない
⑩社長の想いが審判委員を動かす
法律がすべてではありません。労働審判では、社長の想いが審判委員を動かすことがあるのです。
労働審判は調停による解決を目指す制度
労働審判は、「全か無か」というような一刀両断の判断を下すのではなく、そうした審判を見通しながらも、あくまで調停による解決を目指す制度です。そのため、法律以外の要素が大きな意味を持つこともあります。
経営者の申立人(従業員)に対する処遇や対応には多くの場合合理性があります。法律だけで考えれば非情な判断が下されかねない事案であったとしても、その合理性を掬い取ることができるのが労働審判です。
当該従業員の待遇や働き方、態度はどうであったか、会社が被った不利益や損害、他の従業員への影響、あるいは会社の経営状況など、様々な事情が事件の背景にはあるはずです。
説得の方向性を申立人側に向ける
そうした事情の中に、時に審判委員の心に触れるものがあります。「法的には会社が不利かもしれないけど、そうした事情からすれば申立人に折れてもらうべき」と審判委員が感じてくれることもあります。きわどい事件では、最後は社長の想いが解決の決め手となることもあるのです。
当事務所では、予防法務の視点から、企業様に顧問弁護士契約を推奨しております。顧問弁護士には、法務コストを軽減し、経営に専念できる環境を整えるなど、様々なメリットがあります。 詳しくは、【顧問弁護士のメリット】をご覧ください。
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岐阜県出身。中央大学法科大学院卒業。経営者側に立った経営労務に特化し、現在扱う業務のほとんどが労働法分野を中心とした企業に対する法律顧問業務で占められている。分野を経営労務と中小企業法務に絞り、業務を集中特化することで培われたノウハウ・経験知に基づく法務の力で多くの企業の皆様の成長・発展に寄与する。
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