問題社員対応事例①(職務怠慢な社員を辞めさせたい!)

虎ノ門法律経済事務所名古屋支店では、問題社員への対応方法をご提案するとともに、団体交渉・労働組合対策、未払残業代問題、休職問題など各テーマ別ノウハウに基づいたご支援をさせていただくことが可能です。問題社員対応や解雇無効の問題等でお困りの会社様は、是非一度当事務所にご相談ください。

名古屋市で健康食品の販売を手掛けるA社からのご相談


当社は、愛知県名古屋市で健康食品の販売を手掛けており、ネットでの販売のほか、愛知県内では3店舗で店頭販売も行っています。従業員は、パートも含めて約50名ほどですが、その中で入社3年目の正社員Bの処遇に手を焼いています。
  
現在名古屋市内の店舗に配属されているBは、もともと仕事に熱心な方ではありませんでしたが、この2か月間ほどは仕事をほとんどサボっている状態です。出勤はしているのですが、店舗での販売接客をまったくせず、ほとんどの時間をバックヤードでパソコンや携帯を見て過ごしています。他の正社員やパート従業員からは、仕事をほとんどしていないのに給料だけもらって不公平だという声や、Bがいるだけで仕事がやりにくく大きなストレスだという声が聞こえています。つい最近では、あるパート従業員の悪口が書かれた紙がバックヤードに置かれていて、皆気味悪がっています。証拠はありませんが、そんなことをするのはB以外に考えられません。
  
何度か注意はしてきましたが、もう限界です。Bを会社から辞めさせたいのですが、解雇してしまっても大丈夫でしょうか。日本では解雇規制が厳しいと聞いたことがありますので、どのように対応すればよいでしょうか?

(※ 相談事例は、実際に当事務所で扱った相談・解決事例を基に、プライバシー保護の観点から修正を加えたフィクションです。)

ローパフォーマー社員の解雇

従業員Bは、職務懈怠が著しいローパフォーマー社員であり、職場士気への悪影響も考えると、会社にとっては放置できない問題社員といえそうです。

解雇権濫用法理

もっとも、日本では、職務懈怠や業務命令違反などのある問題社員であったとしても、これを解雇することは厳しく制限されています。いわゆる「解雇権濫用法理」と言われるもので、労働契約法16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定しています。
つまり、解雇には客観的に合理的な理由と社会的相当性が求められる結果、問題社員であっても簡単には解雇できない、ということです。ここが、法律と経営者の方の考え(常識)との間にギャップが生じやすい部分といえます。

安易な解雇をすると解雇無効により解雇期間中の賃金支払い義務が発生

そのため、会社が、いくらその従業員を問題社員だと認識していたとしても、十分な検討を経ることなく安易に解雇してしまえば、その解雇は法的な要件を充足していないものとして「無効」だと判断されてしまう可能性があります。
  
客観的に合理的理由のない(あるいは相当性のない)解雇を行った使用者には、労働者の就労不能につき責めに帰すべき事由があることになりますので、原則として、解雇期間中の当該従業員の賃金を支払う義務を負うことになります(民法536条2項)。訴訟となれば法的判断が確定するまでに2年近く要することもありますので、その場合は、約2年分の賃金を働いてもいない問題社員に払わざるを得ないという事態に陥りかねません。
したがって、会社としては、問題社員を解雇するという行動に出る前に、果たしてその解雇は法律上有効となる要件を満たしているのか、そうでない場合には、どうすれば有効に退職してもらえるのか、について労務の専門家の助言・支援を受けることが、必要なリスクマネジメントといえるでしょう。

厳格な解雇の相当性判断

裁判所は、一般的には、容易には解雇の社会的相当性を認めず、労働者側に有利な諸事情を考慮したり、解雇以外の手段による対処の可能性(解雇回避の努力)を求める傾向が強いといえます。
  
なお、裁判例の傾向を踏まえた解雇有効性判断のポイントについては、『能力・適格性が欠如する問題社員対応のポイント』で詳しく解説していますので、そちらもご参考いただければと思います。

【ブルームバーグ・エル・ピー事件‐東京高判平成25年4月24日】

会社が主張する各解雇事由、すなわち、所在不明、協力関係不構築、執筆スピードの遅さ、記事本数の少なさ及び記事内容の質の低さのそれぞれについて、それらが使用者の主観的評価としては認められるとしたものの、当該従業員は会社から与えられたアクションプラン等の課題をほぼ達成しているうえ、当該従業員に求められる職務能力を立証するために会社が提出した証拠は適切なものとは言い難いとして、当該従業員の職務能力の低下が使用者との間の労働契約を継続することができないほどに重大なものであるとは言えないと判断し、解雇を無効とした事例

相談事例の解雇有効性

職務懈怠の客観化

仕事をサボっているわけですから、問題社員Bは労働契約で約束された就労義務を果たしていないといえます。
  
もっとも、出勤はしていますので、その勤務状態が「就労義務を果たしていない」ものであるか否かについては、会社側がその根拠を固め、立証しなければいけません。「販売促進のアイデアをずっと考えていた」「体調が悪くて休んでいただけ」など、いくらでも従業員側も主張することはできます。
  
そのため、口頭による注意を繰り返すだけでは十分とはいえず、具体的にどのような業務を行うべきかを明確に指示・命令し、これに対する従業員の履行状況を客観的にモニタリングすることで、「就労義務を果たしていない」事実を見える化しなければいけません。

解雇回避措置

また、就労義務を果たしていないとしても、会社側には教育指導など相応の解雇回避措置が求められます。愛知県内に店舗が複数あり、店舗販売以外の業務もあるということであれば、他の業務なら平均的な働きをしてもらえる可能性があるかということも、検討する必要はあるでしょう。
そのため、この段階でいきなり解雇することは、客観的資料不足と解雇回避措置の不十分性から、法的には難しいといえるでしょう。

解雇だけが手段じゃない-円満退職の方法

問題社員側も辛さを抱えている

会社が「問題社員」だと認識した従業員であっても、その解決方法は「解雇」だけではありません。
相談事例の従業員Bにおいても、その勤務態度から社内での孤立は不可避であり、A社での勤務に息を詰まらせている可能性もあります。A社での仕事に限界を感じ、転職を考えていることもあります。
しかしながら、会社が自分を解雇しようとしている、などと感じると、態度を硬化させ、徹底して会社に抵抗する、ということになりがちです。従業員が置かれている立場や状況を冷静に認識し、それに応じた適切な対応をすることが、結局は、会社にとっても、また従業員にとっても望ましい結果となることが多いといえます。

方向性を間違えない

そこで会社が採るべき方法は、当該問題社員に「本当はどうあってほしいか」ということを具体的かつ文字化して明示し、そこに近づけるための教育的プログラムを実施することです。
  
この方向性は、従業員を「辞めさせる」ことに向いていてはいけません。あくまで戦力に育てるという方向性を持つことが何よりも大事です。決して、「追い出し部屋」のようなブラックな対応をしてはいけません。そうしたものは、結局うまくいかないでしょう。正当な方法で向き合うことが、使用者と労働者の双方を幸せにします。
  
教育指導の結果、問題社員が「戦力」になれば会社にとってはこれ以上ない問題解決になるでしょう。他方、問題社員が問題社員のまま改善の余地がなければ、自主的な退職か、あるいはそこではじめて解雇という選択肢が有効となってきます。いずれにしても、方向性を誤らなければ、問題解決を図ることは十分可能です。

解決方法は多種多様

上記はあくまで一つの解決方法ですが、ローパフォーマー社員対応にあたっては有効な選択肢となり得ます。その他にも、問題社員対応にあたっては、懲戒処分が必要なケース、人事異動等の人事権行使で対応するケース、社長面談による短期決戦など、取るべき方法は事案によって実に様々です。
  
会社がある従業員を「問題社員」だと認識し、その従業員への対応が必要な状況にあるのであれば、まずは労働問題に強い弁護士等の専門家へ相談し、必要に応じて支援を受けながら対応することが、問題解決への近道でありリスク回避の最善策となるでしょう。


 

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