懲戒処分の社内公表はどこまで可能?社内通知に注意点・判断基準について弁護士が解説!
虎ノ門法律経済事務所名古屋支店では、問題社員への対応方法をご提案するとともに、団体交渉・労働組合対策、未払残業代問題、休職問題など各テーマ別ノウハウに基づいたご支援をさせていただくことが可能です。問題社員対応や解雇無効の問題等でお困りの会社様は、是非一度当事務所にご相談ください。
本記事で書かれている内容
懲戒処分を公表したい!
戒告・けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇又は懲戒解雇のいずれの懲戒処分であるか否かを問わず、懲戒処分を行った事実を社内に公表したい、あるいはどこまで公表できるかというご相談をいただくことがあります。特に業務命令違背が著しい場合や、規律違反が著しく社内秩序を乱すような問題社員については、使用者として厳しい態度で臨んでいることを社内に示したいという意向があります。
懲戒処分を社内に公表することには意義があるものですが、プライバシーへの配慮も必要なため、慎重な検討が必要です。
懲戒処分の公表
公表の目的
懲戒処分を公表する目的は、第一義的には「再発の防止」にあります。懲戒処分は企業秩序違反行為に対して科される制裁罰ですから、違反行為があれば罰せられるということを従業員に知らしめることは、同種の違反行為の抑止となります。
また、職務懈怠や規律違反行為に対して使用者が厳しい態度で臨んでいることを示すことは、真面目に働いてくれている他の従業員の信頼を得ることにもつながります。職務懈怠や規律違反を繰り返すような問題社員の存在は、他の従業員にとって大きなストレスや不利益となっていることが通例です。使用者もこうした社員に手を焼いてみて見ぬふりをしていることがありますが、それでは真面目に働いてくれている他の社員が報われません。問題社員に対しては厳しい態度で臨み、その問題行動の是正を図ることは、職場環境を良好なものとし、そのような経営者側の姿勢を示すことは、社員を大切にしているというメッセージともなります。
氏名の公表
懲戒処分公表の目的はこのようなところにありますので、公表それ自体によって懲戒処分対象者へ制裁を加えようとする意図をもってはいけません。懲戒処分を受けたという事実は、一般的に他者に知られたくない事実であり、懲戒処分対象者のプライバシーへの配慮が必要です。
例外的なケースはもちろんありますが、上記の目的から考えると、一般的には懲戒処分対象者の氏名まで公表する必要性があることは少ないといえ、氏名公表には慎重になるべきでしょう。
公表の内容
懲戒処分を公表する場合、公表する内容としては次の事項が考えられます。
① 懲戒処分対象行為
無断欠勤、職場離脱、ハラスメント、横領・不正経理、会社物品の私的利用など
② 懲戒事由
就業規則上の該当条項など
③ 懲戒処分の種類
戒告・けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇又は懲戒解雇など
公表の方法
各企業で活用している普段の告知手段によって公表することが適当です。社内掲示板や回覧板など適宜の方法で公表することが可能です。
懲戒処分対象者への配慮はどこまで
公表内容から推測される場合
対象者の氏名を公表しないとしても、懲戒処分を公表すれば、対象者の所属部署や懲戒処分の内容等によっては誰が懲戒処分を受けたのかということが推測されてしまうことがあります。例えば、懲戒解雇をした場合には、対象者が突然退職するわけですから、同じ部署にいる他の社員などは察しがつくかもしれません。
このような場合であっても、上述した本来の公表の目的に従って公表を行う限りは、一般的には公表を行うことは妨げられません。結果的に誰が処分を受けたのかが社員の間で分かったとしても、公表の目的と必要性に照らして考えれば、懲戒処分の公表はそれが相当な方法をもって行われる限りは正当な行為として許されるものと思料いたします。
取引先等に対しては
プライバシーへの配慮の必要性は社内だけでなく社外についても同様です。
特に必要のない限り、取引先等に対して「●●は■■により懲戒解雇となったので、担当が変更になります」などと懲戒処分の事実を告げることは避けるべきです。「一身上の都合により」あるいは「業務上の理由で」などと伝えることで足りることがほとんどではないでしょうか。
労務管理には専門家の支援を
ここでは、懲戒処分を行った場合の懲戒処分の公表について説明させていただきました。懲戒処分の公表は、再発防止や企業秩序維持に向けた会社の姿勢を示す点で意義のあるものであり、懲戒処分とその公表をセットで行うフローを確立しておくことは大切です。もっとも、企業としては感情的な部分を排除し、対象者のプライバシーへの配慮を忘れてはいけません。秩序を重視すべき使用者側が、かえって対象社員からプライバシー侵害などの違法性を指摘されるなど足元をすくわれることのないようにすることが肝要です。
労働規制は複雑なうえに、その理解と運用を誤れば大きなリスクを企業にもたらします。労務管理については、労働問題に強い弁護士や法律事務所などの労務の専門家の支援を受けながら、制度設計と運用をされることを強くお勧めいたします。真面目に経営をされている経営者の皆様が、法を「知らなかった」、あるいは「軽んじていた」がために、苦しい思いをされることが少しでもなくなるようにと願っています。
当事務所では、予防法務の視点から、企業様に顧問弁護士契約を推奨しております。顧問弁護士には、法務コストを軽減し、経営に専念できる環境を整えるなど、様々なメリットがあります。 詳しくは、【顧問弁護士のメリット】をご覧ください。
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岐阜県出身。中央大学法科大学院卒業。経営者側に立った経営労務に特化し、現在扱う業務のほとんどが労働法分野を中心とした企業に対する法律顧問業務で占められている。分野を経営労務と中小企業法務に絞り、業務を集中特化することで培われたノウハウ・経験知に基づく法務の力で多くの企業の皆様の成長・発展に寄与する。
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