余剰人員の削減!でも中小企業が整理解雇を行う前にやるべきこと

虎ノ門法律経済事務所名古屋支店では、問題社員への対応方法をご提案するとともに、団体交渉・労働組合対策、未払残業代問題、休職問題など各テーマ別ノウハウに基づいたご支援をさせていただくことが可能です。問題社員対応や解雇無効の問題等でお困りの会社様は、是非一度当事務所にご相談ください。

整理解雇は最終手段

売上が急激に減少し、しかも業績の回復が長期的に見込めないような場合には、経営判断の一つとして余剰人員の削減措置を行おうとされる経営者の方は多いかと思います。もっとも、一口に「人員削減」、いわゆるリストラと言っても、その手法は様々であり、中でも「整理解雇」は最終手段として位置づけるべきものです。そのため、企業は、整理解雇を行う前に、他の「人員削減」又は「人件費削減」措置を尽くすことが必要です。整理解雇については、【不況時の人員削減‐中小企業のための整理解雇実行の手引き】で詳しく解説していますので、こちらをご参考ください。

日本では整理解雇は簡単に認められない

なぜ整理解雇は最終手段として位置付けられるかというと、それが使用者による一方的な労働契約の解約措置である「解雇」であるからです。しかも、ここで大事なことが、経営判断の一つとして整理解雇は、企業側の経営上の必要性に基づく解雇であり、能力不足や非違行為といった労働者側の非によるものではないという点です。特に日本では、いわゆる無期雇用労働者である「正社員」の価値は非常に高いとされています。年功序列、終身雇用といった日本型雇用慣行が今なお念頭に置かれているため、その正社員の地位を「経営上の必要性」という使用者側の都合で一方的に奪うことに、裁判官からは厳しい視線が注がれます。
  
したがって、「会社の存続がかかっている」ことを理由に整理解雇は容易に認められると考えられている使用者の方もいらっしゃいますが、実際はその逆なのです。解雇が有効となるための「客観的に合理的理由」と「社会通念上の相当性」(労働契約法16条)は、労働者側に落ち度がない整理解雇の局面ではより一層厳格に判断され、それが有効となるためのハードルは非常に高いと心得て置く必要があります。

要注意!「解雇」と「合意退職」は全く異なる概念

「解雇」と「合意退職」の区別がついていない経営者の方が多くいらっしゃると感じています。この違いを理解しないまま、安易に「解雇」という言葉を使ってしまったがために、大きな労務トラブルに発展してしまうケースが多くあります。
  
「解雇」は、使用者による労働契約解約の一方的な意思表示であり、いわゆる「クビ」というものです。そのインパクトは大きく、唐突に言われれば労働者が反発することも無理からぬことです。
  
他方で「合意退職」は、使用者と労働者の話し合いに基づき、合意が形成された結果としての退職です。使用者が労働者に対し、「経営が苦しく給料を払い続けることができないから、申し訳ないけど辞めてもらえないか。」と話を切り出し、労働者の側が「残念ですが、仕方がないですね。分かりました。」と言えば「合意退職」となります。このときに、間違っても「解雇」という言葉を使ってはいけません。「解雇」と「合意退職」は全く別の概念であり、言葉の使い方を誤るだけで無用な労務トラブルが起こりかねませんので、この点は特に注意をしていただきたく思います。

整理解雇を行う前にとるべき人員・人件費削減措置

希望退職募集

目標削減人数を掲げたうえで、退職者を募集します。目標人数の応募が得られるように、募集に当たっては労働者側に十分なメリットを感じることができるだけの条件を提示することが必要です。このため、希望退職制度を実施するためには相応のコストがかかることになりますが、市場の変化等により業績の回復が見通せないような場合、中長期で考えれば総人件費の大幅なカットが可能となりますので、中長期的な損益をシミュレーションし退職条件を検討します。

退職勧奨

従業員に対し、個別に退職を勧奨します。これはあくまで解雇ではなく退職の打診であり、退職の勧めに過ぎませんので、勢い余って「退職勧奨に応じなければ解雇する」などと言わないように気を付けなければなりません。退職勧奨に当たっても、これに応じることのメリットを労働者側に与えることが必要であり、解決金の提示とセットで行うべきといえます。
  
また、残留する社員と退職勧奨の対象となる社員とに分かれる場合、その選別については説得力ある理由を説明できるようにしておかなければなりません。対象者の選別基準は労働者側として非常に大きな関心事項ですので、ここに不信感を持たれれば退職勧奨に応じてもらえない可能性が高まります。

休業

希望退職の募集や退職勧奨と合わせて行うことで、それらの効果を高めることが可能です。
  
店舗の閉鎖や顧客の大幅な減少等により人員に余剰が生じている場合、経営上の必要性に基づき従業員の休業措置を図ることができます。従業員を休業させる場合には、平均賃金6割以上の休業手当を支払う必要がありますが(労働基準法26条)、賃金コストを引き下げることができるうえ、雇用維持に向けた企業としての努力を示すこともできます。特に、新型コロナウイルスの影響下においては、雇用調整助成金の大幅な拡充がなされているため、休業手当の相当額において助成金を受給することができ、企業側の負担は最小限に抑えることが可能です。
  
このため、助成金を活用しながら相当な期間にわたり休業措置をとることも検討し、労働者側は雇用維持と引き換えにそれを甘受しなければなりません。ここで、逆説的ですが、労働者側にとっては、先行きの見えない業界、会社にしがみ続けるよりも、別の仕事を探す方向に意識が変わっていくこともありえるでしょう。

賃金引下げ

人件費の削減という点では、退職に限らず、労働者全員で痛みを分かち合う賃金の引き下げも検討すべき事項です。賃金の減額は労働条件の重大な不利益変更なため、これを行うためには原則として労働者側の同意が必要です。企業が置かれている事業環境、経営上の危機について客観的な資料に基づいた説明を行い、労働者側の理解を得る努力をすることが必要です。「整理解雇」となりその地位を失わせることを避けるための措置であることを理解してもらい、また、業績が回復すれば賃金を元の水準以上に引き上げることなどを条件とするなど、士気の低下を最小限にとどめながら同意を得られるよう進めていきます。

配置転換

他の職種等への転換を含めた配転による人材活用を検討します。会社によっては配転や出向の方法をとる余地がない場合もあるかと思いますが、そのような場合には、所定労働時間や出勤日数の低減等、労働条件の大幅な変更について検討することもあるでしょう。

余剰人員・人件費削減措置の実施には専門家の支援を

経営危機下において、余剰人員又は人件費の削減措置をとる場合には、整理解雇は最終手段であることを念頭においたうえで、それ以外の方法についてプランを策定したうえで慎重に実施していくことが大切です。経営者としては、「会社の存続をかけた一大事」という危機感からの非常措置であっても、労働者側にとっては、退職や解雇などの措置がとられる状況は「人生をかけた一大事」といえます。ここに思いを馳せることができるか否かが、人員削減等の雇用調整をうまく進めるための一番の勘所のように感じています。
  
企業の存続をかけた大事な局面だからこそ、そうした措置をとる場合には、労働問題に強い弁護士や法律事務所などの労務の専門家の支援を受けながら、その計画の策定と実施をされることを強くお勧めいたします。真面目に経営をされている経営者の皆様が、法を「知らなかった」、あるいは「軽んじていた」がために、苦しい思いをされることが少しでもなくなるようにと願っています。


 

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