建設業の「週休2日制・4週8休問題」 - 働き方改革と建設業の持続可能な経営 -
文責:弁護士 古山 雅則
本記事で書かれている内容
建設業で進む「週休2日制」の流れ
近年、建設業界では週休2日制(4週8休)の導入が強く求められるようになっています。
背景には
• 長時間労働の是正
• 建設業の担い手不足
• 若手人材の確保
• 働き方改革
といった建設業を取り巻く重要な課題があります。
国土交通省も「建設業の働き方改革」の一環として、
• 週休二日制工事の推進
• 適正工期の確保
• 労働時間の削減
などを強く進めています。
1.週休2日制(4週8休)とは何か
建設業でいう週休2日制とは、4週間で8日の休日を確保することを意味します。
つまり、平均すると週2日の休日を確保する働き方です。
労働基準法上の法定労働時間は、1週間について40時間、1日について8時間となっているため(労基法32条)、週休2日制を採用することによってこの法定労働時間内での労働を実現できることが通常です。
週40時間制が実施されるようになった1997年以降、多くの企業で週休二日制が進められ、現在では特にホワイトカラーと呼ばれる事務系職種では当たり前になりつつある働き方となっています。
ところが建設業では長年、
• 日曜休み
• 土曜出勤
という働き方が一般的でした。
国土交通省が作成する「建設産業における働き方の現状」資料によれば、令和4年における年間の出勤日数は全産業と比べて12日多く、年間の総実労働時間は68時間長いことが示されています。
また、建設業における平均的な休日の取得状況については、技術者・技能者ともに4週6休程度が最多となっており、4週8休(週休2日)の確保ができていない場合があることが明らかとなっています(国土交通省「適正な工期設定による働き方改革の推進に関する調査」令和5年5月公表)。同資料によれば、4週8休の休日を取得できている技能者は12.8%にとどまっています。
そのため、週休2日制の実現は、建設業の働き方改革の象徴的なテーマとして取り上げられています。
なお、より近いところでみると、後述する「3.国土交通省・業界団体による政策」による働き方改革の推進の成果が出ているのか、一般社団法人全国建設業協会の「令和7年度労働環境の整備に関するアンケート結果」によれば、4週8休の休日を実現している企業が増えていることが見受けられ、約8割の企業で年間休日101日以上となっています(あくまで101日以上なので完全な週休2日の確保ができているわけではありませんが、休日が増えていることが窺われます。)。ただし、土木公共の現場では概ね4週8休を実施できている企業が69.6%であるのに対し、建築民間では48.3%にとどまるなど、公共工事と民間工事とでは大きな差が出ています。
2.なぜ建設業で週休2日制が求められるのか
最大の理由は厳しい工期と担い手不足・人手不足です。
建設業の担い手は年々減少しており、技能者の高齢化も進んでいます。
一方で、
• インフラ整備
• 災害復旧
• 都市開発
など、建設需要は依然として高い状況が続いており、発注者からの希望工期も厳しいものになりがちです。
こうした中で、若い人材が入ってこない業界になってしまえば、将来、建設工事そのものが成り立たなくなる可能性があります。
入職者が増えない大きな要因の一つが、
• 長時間労働
• 休日の少なさ
• 技能者(職人)の低賃金
と指摘されています。
3.国土交通省・業界団体による政策
国土交通省もこうした担い手不足に対する危機感を抱いています。
国交省のサイトでは、「我が国の建設産業は、建設投資の減少等により競争が激化し、地域社会を支えてきた建設企業が疲弊するとともに、就労環境の悪化等により若年入職者が減少するなど、かつてない厳しい状況に直面している」「若年入職者が大きく減少する一方、高齢化が進み、このままでは熟練工から若手への技能承継がなされずに、将来の建設産業自体の存続が危惧される状況に立ち至っています。人材の育成には一定の期間を要することから、今ここで適切な対策を講じなければ、近い将来、災害対応やインフラの維持・更新にも支障が生じかねない」などの厳しい言葉が並んでいます。
こうした危機感を受け、まさに国交省が主導して建設産業の働き方改革、労働条件の改善、魅力向上のための様々な施策を打ち出しています。
その重要政策の一つが、建設業の週休2日制推進です。
例えば、
• 週休2日制モデル工事
• 週休2日制工事の発注
• 適正工期の確保
• 労務費の適正確保
などの取り組みです。
公共工事では、4週8休を前提とした工期設定が進められています。
建設業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議が策定した「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」においては、「発注者は、長時間労働の是正や週休2日の確保など建設業への時間外労働の上限規制の適用に向けた環境整備に配慮して、適正な工期での請負契約を締結する役割を担う」ことが発注者の役割として明記され、その取り組みを主導しています。
また、日本建設業連合会は、4週8閉所(年間104閉所)の実現、4週8休の確実な取得に向けた取り組みを推進し、全国建設業協会も週休2日実現運動を展開するなど、官民が一体となって建設業の働き方改革を進めています。
4.中小建設業が直面する現実
とはいえ、中小建設業の経営者の多くは、次のような悩みを抱えているのではないでしょうか
• 工期が厳しい
• 人手が足りない
• 休むと工事が進まない
• 元請からの要請が厳しい
つまり、理想・政策と現実のギャップがあるのも事実です。
しかし、この問題を放置すると、
• 若手が入らない
• 技能者が定着しない
• 人材確保がさらに困難になる
という悪循環に陥ります。
5.週休2日制は「コスト」ではなく「投資」
週休2日制を導入すると、
• 工期が延びる
• 人件費が増える
といった懸念を持つ企業もあります。
しかし視点を変えると、週休2日制は人材確保のための投資でもあります。
実際に、働き方改革を進めた建設会社では、
• 若手採用が増えた
• 定着率が向上した
• 企業イメージが改善した
という例も少なくありません。
6.週休2日制と労働時間規制
2024年4月からは、時間外労働の上限規制が建設業に適用されています。
これは、法定時間外労働45時間を超えることのできる月数は6か月に制限され、時間外労働と休日労働の合計について複数月平均80時間以内、単月100時間未満とする上限が罰則付きで適用されるものです(労基法36条5項、6項)。
そのため、休日が少ない働き方を続けると、時間外労働規制に違反するリスクが高くなります。
つまり、
• 週休2日制
• 労働時間規制
は密接に関係しています。
7.企業が取るべき実務対応
週休2日制の導入には、段階的な取り組みが重要です。
例えば次のような対応が考えられます。
① 工期管理の見直し
無理な工期は長時間労働の原因になります。
発注者や元請との契約段階で、適正な工期設定を検討する必要があります。
これは一次下請を含めた下請企業だけで実現できるものではありません。発注者と元請企業が率先して「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」に従った適正な工期での請負契約の締結を進めていくことが肝となります。
建設産業の受注能力の維持と担い手確保は、発注者側にとっても重大な影響を及ぼす問題です。製造業、不動産業、物流など各種産業は、まさに建設業なくしてはその基盤を持つことができません。社会資本整備の担い手であり重要な基幹産業である建設業が適切な事業環境を維持できるよう、発注者を含めた全産業の理解と時代に合わせた変化をしていくことが求められます。
② 業務効率化
例えば
• ICT施工
• DX化
• 書類業務の簡素化
• 工程管理の見直し
などによって、労働時間削減を図ることができます。
建設業に限られませんが、業務にはどうしても無駄がつきものです。また、必要な作業であっても、それが単純で簡単であるがために、特に意識することなく昔から同じやり方をずっとしているものもあるかもしれません。
無駄やアナログ的なやり方それ自体がすべて悪いとはいえませんが、システムがあればもっと効率化できることや、ITの活用で省人化できる業務などの改善点の有無について洗い出しをしてみることは有益です。
現場作業と事務作業それぞれについて、アイデア出しをしてみると、思わぬ発見があるかもしれません。例えば、現場の写真撮影時の黒板をアプリによる電子黒板にすれば、手書きの時間を減らしたり、自動保存ができるため写真整理の時間もなくすことができるかもしれません。
③ 人材確保戦略
週休2日制は、
• 採用
• 定着
• 技能継承
の観点でも重要です。
若手人材にとって、休日の多さは重要な要素です。
1年を通じて繁閑の差が明確にあるといったような場合は、例えば変形労働時間制を導入することで休日を増やすことができるかもしれません。
また、休日を増やすにあたって課題となるのは、賃金制度です。
休日増ということは、就労日減ということです。就労日が減るにもかかわらず、賃金が同じであれば、それは賃金増を意味しますが、会社側としては稼働日減でありコストアップとなる可能性があります。
日給制の技能労働者の場合、休日増は稼働日が減って収入の減少につながりかねませんが、それは技能労働者にとって望まざるものであることがほとんどでしょう。このため、これまで日給制あるいは日給月給制をとってきた技能労働者の賃金については、月給制への移行も検討する必要があります。
働き方改革と待遇向上が目指される建設業界において、週休2日制と月給制への移行はセットで行われることが望ましいともいえます。
まずは利益計画や総労務費見込額を擦り合わせ、仮月給額を設定してシミュレーションをしてみるなど、月給制への移行についての検討をしてみると良いでしょう。
8.週休2日制は建設業の未来を左右する
建設業は、社会インフラを支える重要な産業です。
しかし、
• 人手不足
• 高齢化
• 若年入職者の減少
という問題は深刻です。
その中で、働き方を変えることは避けて通れない課題になっています。
週休2日制の導入は、単なる制度改革ではなく、建設業の持続可能性を左右するテーマと言えるでしょう。
9.虎ノ門法律経済事務所名古屋支店の法務支援
虎ノ門法律経済事務所名古屋支店では、名古屋・愛知を中心に中小建設企業の労務問題を多数支援しています。
主な支援内容
• 建設業の働き方改革支援
• 労働時間管理体制整備
• 36協定見直し
• 未払残業代リスク診断
• 就業規則整備
• 変形労働時間制の導入及び運用支援
• 労基署対応
• 労務トラブル対応
建設業の働き方改革は「人を守る経営」
週休2日制の問題は、単なる休日の問題ではありません。
それは、
• 人材確保
• 技能継承
• 企業の持続的成長
に関わる経営課題です。
建設業が社会から必要とされ続けるためにも、働き方を見直し、魅力ある産業へと変わっていくことが求められています。
建設業の労務問題でお困りの方へ
• 週休2日制の導入を検討している
• 労働時間管理が不安
• 働き方改革を進めたい
そのような場合はお気軽にご相談ください。
建設業の労務問題については、建設業における労働問題に強い弁護士などの労務の専門家の支援を受けながら、対応をされることをお勧めいたします。
真面目に経営をされている建設業の経営者の皆様が、労務管理の問題で苦しい思いをされないよう、少しでもお力になれればと願っています。

岐阜県出身。中央大学法科大学院卒業。経営者側に立った経営労務に特化し、現在扱う業務のほとんどが労働法分野を中心とした企業に対する法律顧問業務で占められている。分野を経営労務と中小企業法務に絞り、業務を集中特化することで培われたノウハウ・経験知に基づく法務の力で多くの企業の皆様の成長・発展に寄与する。
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